学術会議の「任命拒否問題」に潜む次の問題点 国立大学の学長人事に波及する恐れもある

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任命拒否された候補者の1人、立命館大学の松宮孝明教授(刑事法学)は9月28日夕に日本学術会議の事務局から電話で会員に任命されなかったことを知らされたという。

松宮教授は東洋経済の取材に対し、「日本学術会議の会員選考基準は学問研究能力しかない。専門家集団である日本学術会議が推薦した人を専門家でない総理大臣が『いや、違う』と言えない。日本学術会議法は事実上、任命拒否権など認めていない」と指摘する。

松宮教授は2017年に参議院の法務委員会で参考人として出席し、共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法について、「市民生活の自由と安全が危機にさらされる戦後最悪の治安立法となるだけでなく、実務へも混乱をもたらす」などと、反対の意見を述べたことがある。

任命拒否撤回を求めて要請

松宮教授は「(2017年の参考人質疑で、改正組織犯罪処罰法は)作っても使われないということも言ったと思うが、実際にこの3年間使われていない。言うことを聞いていただいたほうが、よりよいことができるという話をした」と振り返り、「周りに自分の言うことを聞く人しかはべらせないということになったら絶対に道を誤る。菅政権は恐ろしいことに手を出した」と語る。

松宮教授は同じく任命されなかった法律を専門とする東京慈恵会医科大学の小沢隆一教授(憲法学)、早稲田大学の岡田正則教授(行政法学)とともに、日本学術会議に「会員への任命拒否の撤回に向け、総力であたることを求めます」という趣旨の要請書を提出した。

日本学術会議が菅首相宛に提出した要望書(記者撮影)

日本学術会議は10月1~3日の総会で対応を議論し、菅首相宛の要望書を3日に内閣府官房人事課にメールで送付した(要望書は2日付)。内容は「推薦した会員候補者が任命されない理由を説明いただきたい」「推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかに任命していただきたい」の2点だ。

山極壽一前会長の後任として10月1日付で就任した梶田隆章会長は要望書を正式に決定した3日の幹事会後に「私たちとしてはこの質問を出させていただき、しっかりと理解したい。6人の方たちについて任命されなかった理由がまったくわからないので学術会議としてどうしていいのかがわからないという状況だ」と語った。

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