トランプ大統領の知られざるいまの「懐事情」 ホテルやゴルフコース事業はどうなっている?
しかしこの成功は、『アプレンティス』出演時代のトランプのビジネスモデルの進化の過程においては大きな節目であり、ネクタイや寝具だけではなくビル全体に自身の名前を貸し、それをテレビ番組で宣伝することで、簡単に利益が得られることが示されたのだ。
シカゴ・タワー関連では、トランプは建設費の融資に関して数億ドル規模の訴訟に巻き込まれたが、それとは異なりトランプ・ソーホー・ホテルは、実質的にはトランプにとってリスクフリーだった。同氏の納税記録によると、このプロジェクトに関わったトランプ陣営の企業は、建設や資金提供に関わってもいないのに、ライセンス料とマネジメント料などの名目で最終的になんと900万ドルを手にすることになった。
ライセンス料は一時30億円超に
『アプレンティス』出演で波に乗り、また同時に新たなライセンシングの話が次々と舞い込む中、トランプは2007年にトランプ・ホテル・コレクションを立ち上げ、国外でのプロジェクトを重要視し始めた。かなり野心に溢れる内容で、新たに制作されたウェブサイトには、「開発予定地」としてトロント、メキシコ、ドミニカ共和国、パナマ、スコットランド、ドバイなどが記されていた。
その時点で、ライセンス料はすでにトランプに届き始めていた。トランプは、納税記録によると、2003年の時点ではライセンス事業ではほとんど収入を得ていなかったが、2年後にはそれが130万ドルになり、その後うなぎ上りで2010年には2970万ドル(約31億円)になっていた。その後は減少が続いている。
ライセンス契約においては、初期費用としてかなりの額の支払いが行われる形となっていたことから、トランプ氏は仮にプロジェクトが失敗したとしても利益を得ることができた。
前述のホテル・コレクションのウェブサイトに記載された10箇所の「開発予定地」の中で、3箇所はプロジェクト開始に至らず、5箇所は完了に至らなかったか、その後トランプとの関係を断ち切っている。しかしそれでも、トランプはこれらのプロジェクトから合計で4600万ドルを得ることに成功した。
トランプのプロジェクトの選び方についても、繰り返し疑問が呈されている。選ぶプロジェクトがしばしば、告発や訴訟を受けて中止に追い込まれていたからだ。
リオデジャネイロにおいては、トランプの納税記録によると、ホテルのプロジェクトに署名する際の相手会社の素性調査費用として1万4000ドルが課税対象から控除されているが、トランプは開発企業に贈収賄疑惑がかけられたことで手を引かざるを得なくなった。
長年腐敗が続いていたアゼルバイジャンでは、大臣とつながりのある開発企業がトランプにブランド使用料として500万ドルを支払いホテルの管理をしようとしたが、このホテルは大規模支援者の1人が失踪したことで竣工に至らなかった。