トランプ大統領の知られざるいまの「懐事情」 ホテルやゴルフコース事業はどうなっている?

拡大
縮小

ちなみに、そのすぐ上にはトランプが本部を構えている。年間約40万ドルが積み重なり、リース終了時には220万ドルにもなったことが税務記録からわかっており、これはベイロックにとってはいい投資となった。同グループは、トランプのすぐ真下という近さを武器に、同氏にプロジェクトのアイデアを売りつけ始めた。

ベイロックはある種謎に包まれたグループだ。創業者のテヴフィク・アリフは、旧ソ連時代に高官を務めていたカザフスタン人で、2003年の財務諸表によると、7000万ドルの資産を保有していることになっているが、彼自身の会計士でさえその真偽は明らかにはできないという「ただし書き」付きだ。アリフの右腕であるフェリックス・サターは、ロシア出身の移民でギャングとつながりがあり、犯罪歴を隠すために偽名を使っていたこともある。

世界中に「トランプ・ホテル」建設する構想

しかし、それでもトランプには躊躇する理由にはならなかったようで、トランプは期待の持てるコンセプトであるコンドミニアムホテル事業を共同で進めるための合意に署名した。コンドミニアムホテルとは、個室を購入して使っていない時には貸し出すことができるという形態だ。このとき、ベイロックが求めていたのは、ほぼトランプの名前だけ。建設費はほかから提供されることになっていたのだ。

ベイロックは、アメリカ中、そしてアメリカ国外のホテルにも、トランプ・ブランドを利用しようと提案した。黄金やけばけばしさを好むトランプの派手好きなテイストが、アメリカ流の成功について戯画的な見方をしていた外国人の富裕層にマッチすると考えたのだ。

それから何年もしてから、とある裁判での宣誓供述書において、トランプは新たなパートナーたちと、「世界中で数多くの取引」について議論していたこと、そして「それによってトランプ・インターナショナル・ホテル、タワーをモスクワ、キエフ、イスタンブールなど、それにポーランドのワルシャワに建設することになっていた」と語っている。

同時にトランプは、自らが実際に開発を手がけるわけではないため、ベイロックがトランプのオフィスの2階下で何を行っていたかほとんど知らなかったとも断言している。しかし、タイムズが確認したベイロックの内部文書によると、同社は最初から、トランプ・ブランドを冠したホテルの建設資金をロシアから得ることを模索したようだ。

「ロシアからの資金提供合意」と題された2003年11月の計画の草案によると、とあるブローカー(名前は記されていない)がアメリカ国内での3つのトランプ・ホテルの建設資金として5000万ドルを提供することになっており、またベイロックのトランプ・プロジェクトの「すべての資金集めを行う」可能性も言及されていた。ベイロックの元幹部によると、この計画が実行に移されることはなかったが、同社はその後ロシアとの関係が疑われているアイスランドの銀行から5000万ドルを受け取っているとのことだ。

最終的には、トランプとベイロックとの提携においては、数多くの試み虚しく、マンハッタンのトランプ・ソーホー・コンドミニアムホテルの1件の成功以外は失敗に終わっている。

次ページ『アプレンティス』が命綱に
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT