花王、8年ぶり社長交代に込められた「ある課題」 赤字転落の化粧品と新事業立ち上げがカギ

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その後、コロナ禍が直撃した。2020年1〜6月の化粧品事業の売上高は前年同期比で2割減の1099億円となり、セグメント利益は48億円の赤字に転落した。澤田氏からバトンを受け継ぐ長谷部氏に求められるのは化粧品事業の立て直しだ。

コロナショックで化粧品事業が赤字に転落した大手は資生堂と花王の2社のみ。資生堂は売上高4178億円で営業赤字が34億円。花王の売上高は資生堂の4分の1程度にとどまるが、営業赤字は資生堂を上回る。花王の化粧品事業の深刻さがうかがえる。

花王にはロイヤルカスタマーが少ない

赤字の要因はメーキャップ化粧品の構成比率が高いことなどが考えられる。外出自粛やマスク着用が定着し、メークをする機会が減少した。SMBC日興証券の佐藤有シニアアナリストは、「花王は高価格帯化粧品が弱く、ロイヤルカスタマーが少ない。(コロナ禍で)節約志向が高まり、顧客離れが起きたのではないか」と指摘する。

高価格帯化粧品にはブランドに愛着心を持つファン層がいて、一定の需要が確保できた。しかし、中価格帯が主力の花王はそこで苦戦してしまったわけだ。

花王が保有する「第二の皮膚」ファインファイバーの技術(写真:花王)

また成長のエンジンとして、新規事業の創出も求められる。会見で澤田氏は、「次の花王グループの大きな成長を支えるには新事業を創造していかなくてはいけない。長谷部社長は必ずや達成してくれると思っている」と期待を寄せた。

長谷部氏がイメージする新事業は「人の命を守る事業」(長谷部氏)で、花王はすでに新型コロナウイルスの感染抑制機能を持つ抗体の取得成功や、極細繊維を塗布して第二の皮膚とも呼ばれる膜を作り出す「ファインファイバー」などの技術を有する。

長谷部氏は2009年の発売当時、世界初のコンパクト洗剤となった「アタックNeo」の開発に取り組んだ。アタックの成功同様、澤田氏が撒いた新事業の種をしっかり引き継ぐことができるのかが長谷部氏に問われている。

星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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