花王、8年ぶり社長交代に込められた「ある課題」 赤字転落の化粧品と新事業立ち上げがカギ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

原動力となったのは中国でのシェア拡大だった。中国市場でメリーズが受け入れられた理由は肌に優しいことだった。澤田氏が「サニタリー研究所」(栃木県)の所長時代、陣頭指揮したブランド立て直し策の1つが「肌へのやさしさ」を訴求する製品開発だった。これが国内市場でのV字回復だけでなく、中国市場での躍進のきっかけとなった。

イギリスの市場調査会社ユーロモニターのデータによると、中国のベビーおむつ市場は2012年の43億ドル(約4600億円)から、2019年には88億ドル(約9300億円)へ倍増した。花王のシェアは2012年の3.8%から2019年には8.8%となり、ライバルであるP&Gに次いでシェア2位となっている。

化粧品事業で進めた「選択と集中」

成果の2つ目は化粧品事業の立て直しだ。澤田氏が社長に就任した直後の2013年、子会社のカネボウ化粧品で「白斑問題」が発覚した。美白成分の「ロドデノール」が配合された製品を使用した人たちの間で肌がまだらに白くなる被害が発生。最初の症例を把握してから自主回収に至るまで1年半以上もかかった。

これを機に顧客離れが起き、さらに製品回収などによりカネボウ化粧品は大幅赤字に転落。カネボウ化粧品は2014年12月期には199億円という巨額の最終赤字を計上した。当時は花王全体として化粧品事業の数字は公表していなかったが、ジリ貧状態だったという。

2017年12月期の営業利益率は4.9%で、資生堂の8.0%(2017年12月期)やコーセーの15.9%(2018年3月期)、ポーラ・オルビスHDの15.9%(2017年12月期)と比較すると明らかに見劣りし、当時は「独り負け」と揶揄されるありさまだった。

そこで澤田氏は2018年に化粧品の販売戦略を策定し、「RMK」や「KATE」、「Curel(キュレル)」など世界で拡販を進めるブランドや、「LUNASOL(ルナソル)」「Primavista(プリマヴィスタ)」など日本国内で勝負するブランドを決定。選択と集中を行い、特定ブランドを強化した。その結果、2019年度12月期の化粧品事業のセグメント利益は414億円、営業利益率は約14%となった。

次ページコロナショックが化粧品事業を直撃
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事