不登校で引きこもりになる人が2割以下の背景

実際は一度は仕事に就いた経験がある人も多い

これらの調査による推定引きこもり人数は、15~39歳が54.1万人、40~64歳が61.3万人で、合わせて115.4万人。外出しない引きこもりの人数は15~39歳が54.1万人×10.2%=5.5万人、40~64歳が61.3万人×14.9%=9.1万人で、合わせて14.6万人となります。全体で考えても、家から出ない引きこもりはおよそ12.7%に過ぎません。統計上では、引きこもりと言われている人のうち、9割弱が近所のコンビニ程度の外出はできているのです。

私たちニュースタート事務局は、主に親御さんからの相談を受けていますが、実際の相談でも、コンビニ程度には行けるという人が大半です。全く家から出ない人は、2~3割でしょうか。親御さんが相談しようと思うだけあって深刻なケースが多いのか、内閣府の調査よりも少し多い感じですが、過半数にはほど遠いのが実態です。これは、世間が持つ一般的な引きこもりのイメージとは、だいぶ違うのではないでしょうか。

内閣府では、学生でもなく仕事もしておらず、家族以外とあまり会話していない状況が半年続いている人を、「広義の引きこもり」と定義しています。主婦や家事手伝い、原因が身体的な病気の人などは除きます。省庁によって多少表現の仕方は違いますが、大枠は同じです。

ずっと自室で過ごし、親が部屋の前まで食事を運び、終わったら廊下に出してある食器を取りに行くだけで、親も何年も姿を見ていない人。外出はできて、買い物の時は店員と必要最低限の話はして、近所の人と道端で会えばあいさつ程度はするが、親しく会う友人がいない人。この両方とも、引きこもりと呼ばれる人たちなのです。そして、実際の引きこもりは、後者のタイプが大半を占めているのです。

不登校がきっかけは2割以下

カズヤ君(仮名)は現在、33歳です。専門学校を卒業して就職、実家を出て1人暮らしもしていました。6年同じ会社で勤務を続けますが、だんだん人間関係で負担を感じるようになり、最後は仕事のミスを上司だけでなく後輩にも指摘され、会社に行けなくなりました。

親は息子を実家に戻し、しばらく様子を見ていました。1年もすると、カズヤ君は契約社員として働き始めました。親も一安心しましたが、半年後、彼は契約を更新しませんでした。やはり仕事のミスを何度かして、続けるのがつらくなったようです。そこから5年間、何もしない状況が続いています。

普段はパソコンでゲームをして過ごしています。昼夜逆転の生活ですが、タイミングが合えば、夕食は家族で取ります。一応会話もあります。ゴミ捨てや風呂掃除などを母が頼むと、ちゃんとやってくれます。自主的な外出はほとんどありませんが、親が外食に誘うと出てきます。免許の更新は行ったようですが、就職活動をする様子はまったくありません。友人など親以外の他者とのつながりも、今はまったくないようです。

引きこもりのきっかけは不登校。そんなイメージを持っている人もいることでしょう。確かに一昔前は、そう思われていました。ですから引きこもりは若者の問題とされ、対策の対象年齢もそれに準じたものになっていました。

しかし、内閣府の15~39歳対象の調査では、引きこもりのきっかけが小中高の不登校という人は、18.4%に過ぎません。アキラ君のように大学になじめなかったという人を合わせても、たったの22.4%なのです。40~64歳対象の調査では、小中高の不登校がきっかけと回答した人は、わずか8.5%。複数回答可ですので、最大でもこの数字なのです。

両方を合わせると、不登校がきっかけで引きこもりになった人はおよそ15.0%しかいません。むしろ、カズヤ君のように、一度は仕事についた後に引きこもりになった、というケースの方が主流なのです。

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