ソニー、「終わらない赤字決算」の深刻度 今期も構造改革費用が高止まり

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平井一夫社長が就任した1年目の2013年3月期は5期ぶりの最終黒字化を果たしたが、これはソネットの完全子会社によって入手した、同社出資先のエムスリー株やディー・エヌ・エー株などの売却益によって押し上げたもの。この特殊要因がなければ営業利益はほぼ均衡圏だった。つまり、この2期で悪化したわけではなく、以前から厳しい状況が継続していた。

米国会計基準を採用するソニーは一時的な資産売却益を本業の稼ぎを示す営業利益に含むことができるためだが、そうした安直な利益捻出手段が構造改革を遅らせたとみられている。今期、そうした資産売却益を大きく見込んだ過大な期初計画を立てなかったことからも、いよいよ背水の陣を敷いたと取れる。

エレキの再建は進むか

そのために欠かせないのが、中核であるエレクトロニクス事業の再建だ。

同社は今期から業績見通しの部門別内訳の開示を始めた。部門別にみると、エレキの主要部門のうち、ビデオカメラの大幅な市場縮小を見込むイメージング部門以外は、いずれも増収増益を計画している(イメージングも増益を計画)。スマートフォン販売台数の大幅増で「モバイル・コミュニケーション」の部門売上高は前期の1.1兆円から1.5兆円に、「プレイステーション4」の販売好調で「ゲーム&ネットワークサービス」は1兆円から1.2兆円に(利益も黒字転換)といった具合だ。前期まで10期連続の赤字で累積赤字は8000億円弱に至るテレビ事業も、7月の分社化をテコにして、「今期は黒字化する」(吉田CFO)としている。

ただ、これらの分野で安定的に稼ぐ事は容易ではない。「米国や中国、ブラジル等への展開を進めたい」(吉田CFO)とするスマホだが、先進国ではスマホへの乗り換えは一巡しており、市場の急拡大は一服している。中国メーカーが売る「格安スマホ」に押され、両雄であるアップル、サムスン電子ともすでに伸び悩みを見せている同市場で、存在感を示すのは厳しそうだ。またゲームもスマホゲームの急速な普及で従来型市場が先行きには暗雲が垂れ込めている。

ソニーは5月22日に平井社長による経営方針説明会で、今後の成長戦略を示すとしている。独り負けの停滞感を打破するサプライズがあるのかに市場の注目は集まっている。

風間 直樹 東洋経済コラムニスト

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。2014年8月から2017年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、2019年10月から調査報道部長、2022年4月から24年7月まで『週刊東洋経済』編集長。著書に『ルポ・収容所列島 ニッポンの精神医療を問う』(2022年)、『雇用融解』(2007年)、『融解連鎖』(2010年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(2013年)など。

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