ソニー、「終わらない赤字決算」の深刻度 今期も構造改革費用が高止まり

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5月14日、厳しい表情で決算会見に臨む吉田憲一郎CFO(撮影:尾形文繁)

まさに「独り負け」の様相を呈している。ソニーが5月14日に発表した2015年3月期の連結業績は500億円の最終赤字。期初から赤字継続の予算を組んだ。

高い目標を掲げて期中に下方修正を繰り返し、前期は3度の下方修正を行なった同社が、期初の段階で赤字計画を示すのは、リーマンショックのダメージ冷めやらぬ2010年3月期以来のこと。この通りになれば、1283億円の大幅な赤字に沈んだ前期に続いて、2期連続の最終赤字となる。

「同業他社に比べて業績改善が遅れているのはその通りだ」。4月に就任した吉田憲一郎CFO(最高財務責任者)は率直にこう認める。

構造改革費用が高止まり

利益回復の足を引っ張るのはパソコン「VAIO」事業の収束を含む構造改革費用の高止まりだ。前期の1774億円では終わらず、今期も1350億円を計画している。パソコン事業収束を除く約1000億円を、販売会社と本社のリストラ、加えて一定の減損の発生も見込んでいる。来期までに販売部門で2割、本社間接部門で3割の費用削減に取り組むとしており、当然人員にも手を着けることになる。

「2007年度当時7.2兆円あったエレクトロニクス部門の売り上げは、直近の13年度には5.4兆円まで落ち込んでいる。中でも本社内にあるテレビ、パソコン、デバイスなどはほぼ半減している。それなのに本社の固定費は07年当時よりも増加している」(吉田CFO)という問題意識があるためだ。

経営戦略も管掌するようになった吉田CFOは54歳。出井伸之元社長の社長室長を務め、転出したソネットでは同社の上場やエムスリー、ディー・エヌ・エーなどベンチャー投資も成功させた。前任の加藤優氏(62)から大幅に若返り、CFOに就任した4月1日付で本社機能を18部門78部から13部まで大幅に絞り込むなどスピード感がある。吉田CFOは会見で、「今期は構造改革をやりきる年にしたい」と、長年続いてきた巨額なリストラ費用が利益を押し下げる構造は今期で打ち止めにする見通しを語った。

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