「カローラ」発売1年、順調でも微妙な通信簿 販売2位を成功と見るか、足りないと見るか

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トヨタの広報を通じて内部資料を手に入れたところ、旧型の比率は、昨年夏から20~30%程度で推移していることがわかった。直近の2020年8月でいえば、約24%が旧型となる。

面白いのは、新型も旧型もステーションワゴンの人気が高いこと。とくに新型カローラでいえば、ステーションワゴンのカローラツーリングは、ハッチバックとセダンの合計の1.5倍以上も売れている。また、このカローラツーリングは、ステーションワゴンとミニバンからの乗り換えが多いという。

先代からの代替えが多いと考えれば、ミニバンからの乗り換えが新規のユーザーだと言える。なお、2019年の発売1カ月後の受注状況のアナウンスでは、カローラツーリングの受注の半数は、最上級グレードの「W×B(ダブルバイビー)」であったという。

販売台数のうち、旧型はわずかに2~3割という状況を鑑みれば、新型モデルは順調に新たな、より若いユーザーを獲得したのは間違いない。「新規ユーザーを獲得」して、「より多く売る」というミッションは無事にクリアしたのだ。

成功と見るのか足りないと見るのか

では、新型カローラは、完璧な成功を収めたと言えるだろうか。販売は順調とはいえ、「YES」と言うには微妙なところだ。カローラは「世界ナンバー1のベストセラーカー」なのだ。2位では足りないだろう。

実際に、7月と8月の販売では、順位を3位に落としている。ライズの上に「ヤリス」が1位に飛び出したのだ。さらにヤリスは8月末に「ヤリスクロス」という新型SUVを追加した。

ヤリスのSUV版として登場したヤリスクロス(写真:トヨタ自動車)

人気のコンパクトSUVがヤリスシリーズに加わったことを考えれば、さらにヤリスの数字が伸び、相対的にカローラの株が下がる。

そうとなれば、カローラにも新たなテコ入れが必要になるのではないだろうか。たとえば、7月にタイで公開された新型「カローラクロス」を日本に導入する案も一例だ。そうなれば、カローラだけでなく、国内市場のカンフル剤にもなるだろう。トヨタがどんなアクションを起こすのか、次の一手が需要な一手になることは間違いない。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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