「日銀化」が明らかとなってきたECBの金融政策 為替に隷属しカードを費消する「いつか来た道」

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盛んにユーロ高を牽制したラガルドECB総裁(写真:ロイター/HANNIBAL HANSCHKE)

9月下旬に入り、金融市場では数々の不安材料が多発していることを受けてリスクオフムードが支配的となりつつある。

英国でロックダウンが再開されるとの一報が欧州における新型コロナウイルスの感染拡大第2波への懸念を助長し、悲観ムードを焚き付けているようだ。支持率低迷にあえぐジョンソン政権が感染拡大を政治利用しているのではないかとの声もあるが、新規感染者数が欧州で増えているのは事実であり、フランスでもロックダウンの再導入検討がなされているという。このままいけば恐らくは英国の EU(欧州連合) 離脱交渉スケジュールにも影響してくるだろう。

実情としては新規感染者が増えても死者数はほとんどど増えていないという点で春とは状況が大きく異なるはずだ。だが、元々あった秋冬の感染拡大に対する潜在的な懸念があり(筆者はこれを「越冬リスク」と呼んでいる)、それが顕在化してきたということなのだろう。

こうした中、過去半年間、上昇一辺倒だったユーロドル相場も調整を迫られている。しかし、3月の年初来安値から9月初めの年初来高値まで最大で約13%も上昇していたものが、3%弱下げたにすぎない。しばらくは積み上がった投機的なユーロ買い持ちポジションの調整を余儀なくされるだろう。

身内からも「苦言」が出たECBの通貨高牽制

しかし、それでも9月に入ってから、ECB(欧州中央銀行)が明確に牽制しているにもかかわらず、ユーロドルがまったく動揺することなく堅調を維持してきたのは目を引いた。

9月10日の政策理事会後の会見でラガルドECB総裁は「現在の域内物価は下押し圧力にさらされており、それは部分的には、いや、実際のところ大部分はユーロ高に起因している(largely attributable actually)」と述べ露骨にユーロ高を牽制した。「物価への影響」という論点を通じてしかユーロ高を牽制できないECBにとって、この発言は相当踏み込んだものと言ってよい(同じことを黒田東彦・日本銀行総裁が言ったら相応の騒ぎになる気もするのだが、なぜかECBだとならない)。

これにとどまらず、9月13日にはアラブ諸国の中銀総裁や金融当局者との会合で、やはりラガルド総裁が最近のユーロ高が緩和によるインフレ押し上げ効果を相殺したと指摘したことが報じられている(ブルームバーグ、9月13日付)。ECBの通貨高に対する強い問題意識がうかがえる。

なお、こうした一連の動きの中でドイツ連邦銀行(ブンデスバンク)が、9月21日に公表した報告書の中で「ECBはユーロ相場を動かす意図はないが、その政策運営によってユーロ相場が大きく影響を受けている」、「金融政策を伝達する際、為替相場に及ぼす可能性のある影響を考慮する必要がある」などと指摘している。これはブンデスバンクからECBへの「苦言」であろう。身内からこのようなメッセージが出るほど、ECBの政策運営は物価ではなく為替に向いているのである。

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