「日銀化」が明らかとなってきたECBの金融政策 為替に隷属しカードを費消する「いつか来た道」

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確かに、為替変動が輸入物価を介して一般物価に影響を与える経路は中央銀行として当然懸念すべき点だ。しかし、ユーロ相場が本格的に騰勢を強めたのは6月以降の約3カ月間、3月の年初来安値から起算しても約6カ月間だ。為替変動がたった3カ月ないし6カ月で金融政策の修正を迫るほど物価を動揺させるという説明はやはり無理があるように感じられる。

ECBが2007年8月に発表したワーキングペーパー『The impact of exchange rate shocks on sectoral activity and prices in the Euro area』では、1%のユーロ高は1年後(4四半期後)のユーロ圏消費者物価指数(HICP)を0.07%ポイント押し下げるとの試算が示されている。

また、2014年3月6日の理事会後の記者会見においてドラギ元ECB総裁が「実効ベースで10%のユーロ高はインフレ率を0.4~0.5ポイント下押しする」と述べたこともあった。ここではワーキングペーパーとして示されている試算を用いてイメージづくりをしてみよう。

ユーロ高が物価下落の原因なのか

例えば3カ月を想定して単純にワーキングペーパーで示された影響を4分割すると「1%のユーロ高で0.0175%ポイントのHICP押し下げ」、6カ月ならば2分割で「1%のユーロ高で0.035%ポイントのHICP押し下げ」というイメージになる。もちろん、四半期ごとに等分の影響が出ることはないだろうが、単純化のためそのように仮定する。

現在、HICPは8月分まで公表されており、総合ベースでは4年ぶりの前年比マイナス0.2%、食品・アルコール飲料・タバコを除いたコアベースでは過去最低の同プラス0.4%にとどまっている。

こうした悲惨な物価情勢がECBの危機感を煽っているとの見立ては多く、政策理事会でも相応に議論の的になっていると推測される。そして、ラガルド総裁によれば、それは「大部分がユーロ高のせい」という話になっているもようだ。本当だろうか。

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