中国の電子商取引(EC)最大手、阿里巴巴集団(アリババ)の「新製造(ニューマニュファクチャリング)」への挑戦が新たな段階に入った。
9月16日、傘下の犀牛智造(正式社名は阿里巴巴迅犀〈杭州〉数字科技)で3年前から開発してきた新製造のプラットフォームを公開。アパレル製品を対象に、ネット通販の淘宝(タオバオ)の加盟店を通じて集めたデータを自社工場およびサードパーティーの協力工場とリアルタイムに共有することで、多品種少量の生産に短納期かつ低コストで対応できる柔軟なサプライチェーンの構築を目指している。
「犀牛智造は販売側と生産側のニーズをマッチングさせるためのプラットフォームではない。自分たちは最初から違うやり方を選んだ」。犀牛智造のCEO(最高経営責任者)を務める伍学剛氏はそう強調する。伍氏によれば、犀牛智造が目指しているのは販売現場の需要データを起点にしてサプライチェーン全体が協調するネットワークだ。
「需要データを起点に置かなければ、真に効率的なオンデマンド生産は実現できない。そこが犀牛智造と既存のサプライチェーンの本質的な違いだ」(伍氏)。
モデル工場ではミシンも情報端末に
アパレル製品はタオバオのなかで最大の商品カテゴリーであり、流通総額は年間1兆元(約15兆5000億円)を超える。しかし流行の移り変わりが早く、商品の入れ替わりが頻繁で、売れ残りによる不良在庫や売り切れによる機会損失などの問題が突出して大きい。
さらに、最近のライブコマース(生中継のネット動画による実演販売)の流行により、製造業のサプライチェーンは以前とはレベルの違う納期短縮を求められている。「ライブコマースでは、生中継が終わって工場にオーダーが入ってから3~4日以内に出荷しないと、ほとんどのオーダーが取り消されてしまう」。あるジュエリーの製造業者はそう証言する。
こうした問題を解決するため、犀牛智造は3年かけて蓄積した技術やノウハウを今後は外部の製造業者に広く開放する。製品分野もアパレルを皮切りに、将来はカバンや靴などに広げていく計画だ。
アリババは浙江省杭州市に建設した犀牛智造のモデル工場も公開した。そこでは生産ラインの自動化、デジタル化が極限まで追求されている。例えば縫製ラインでは、1台1台のミシンがすべてプラットフォームに接続した情報端末になっており、オペレーターが手慣れた様子でタブレットの表示を確認しながらミシンを操っていた。
(財新記者:原瑞陽)
※原文の配信は9月17日
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