バイオのアキュセラが米国で起業したワケ マザーズ外国部に上場した異色企業トップに聞く
大学発ベンチャーの流れに乗ってバイオベンチャー設立がブームを迎えたのが2003~2004年。10年の時間が過ぎて表面的なブームは去った。だが、この間にも上場バイオベンチャーは着々と増え、2014年2月には30社を超えた。開発期間も10年を超えており、いよいよ日本のバイオベンチャーの実力が問われ始めている。こんななか、今年2月に東証マザーズ外国部に上場したアメリカ生まれのバイオベンチャーが、アキュセラだ。
アメリカ発だが、創業CEO(最高経営責任者)の窪田良博士は、慶応大学医学部出身の日本人。大学での研究者から臨床医を経て、2002年に起業した。窪田氏はこれまでに研究者、臨床医、企業経営者と3つの段階を踏んでいるが、「眼科治療」というテーマは一貫している。
研究者時代には緑内障の原因遺伝子を発見し、その遺伝子「ミオシリン」は眼科の教科書にも載っているという。臨床医時代には1000件を超える手術を行い、名医との評価も上げた。だが、「自身が治せる患者数は限られる。失明の危機に瀕する世界中の患者を助けるには、薬を作って患者に届けるのが一番いい方法」と思い至り、窪田氏は起業の道に進んだ。2月25日の2460円をピークに大幅な株価下落が続くが、同社の経営戦略は上場時から変わっていない。
日本の出資者に助けられた
――アメリカで起業して日本で上場というのは珍しい。
人がやったことのないことをやりたいという気持ちがあった(笑)。ワシントン大学での研究がきっかけだったので、米国で起業した。子どもの頃にニューヨーク郊外に住んでいたことがあるが、日本人はマネばかりでオリジナリティがないとよく言われた。マネではないオリジナルな発明を日本人もできることを見せたいという気持ちはあった。ただ、米国で起業する場合、サイエンスと経営は分ける方向にある。科学者自身が経営をするというと、出資を断られることも多い。それでもどうしても自分でやりたかった。
また米国ではベンチャーにも収益が上がるか否かを厳しく求めるが、日本の出資者は、起業家と一緒に会社を育てるという意識があり、この点もよかった。起業当初に出資してくれたオリンパスや信越化学には感謝している。その後、SBIや大塚製薬と出会ったことも大きい。SBIはいまも29%の株主。大塚製薬とは主要パイプラインの共同研究を行っている。
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