バイオのアキュセラが米国で起業したワケ

マザーズ外国部に上場した異色企業トップに聞く

――大塚製薬とは最大で240億円の共同研究契約を結んでいる。この研究テーマであるエミクススタト塩酸塩も、眼病の薬だ。

子どもの頃に網膜剥離の手術を受けたことや叔父が眼科医だった影響もあるが、子どもの頃からペットの目を観察するのが好きだった。網膜の病気は、命にかかわる病気ではないので、がんや心臓病のような病気の治療や薬の開発が優先されてきた。

しかし、網膜の病気はいずれ失明に至る。失明は生活の質を著しく低下させる。このリスクを取り除いてあげたい。研究者時代に緑内障の原因遺伝子を発見したが、それだけでは患者は救えない。発見を治療に生かせるようになるには時間がかかる。それで臨床医となったが、自分一人で治せる患者さんの数は限られることがわかった。それで、再生医療を目指してワシントン大学に移り神経細胞の再生の研究を続けたが、再生医療も実用化に時間がかかる。それで化合物による創薬を目指そうと考えた。

――加齢黄斑変性にターゲットを絞った理由は。

世界中で患者数が多いのに治療薬がないこと。できるだけ多くの患者さんを助けられる薬を、と考え加齢黄斑変性の治療薬にターゲットを絞った。もう一つこだわったのは、飲み薬にすること。網膜の病気の薬は、現在は眼球注射しかない。眼球注射は月に一度通院しなければならないうえ、注射は侵襲性が高いし副作用もある。患者さんの負担が大きいので、症状が軽いうちに発見したとしても、末期になるまで使えない。軽症のうちから治療できる薬が必要だと考えた。

目のリスクファクターとして、網膜の光障害があり、加齢とともに現れやすくなる。光を感知する細胞の働きを阻害する化合物を使って、光を弱めてやればいい。化合物の探索も、ある程度の確信があった。資金面での制約もあり2年以内に化合物を見つけなければならなかったが、当時注目を浴びていた化合物ライブラリーから選んで細胞実験をする方法では時間がかかりすぎて間に合わないおそれがある。そのため、ある程度化合物に当たりをつけて、網膜電図によるスクリーニング法を使った。目に光を当てて、心電図のように網膜の神経細胞の働きを観察できる。腫瘍などと違い、動物でもヒトでも同じ結果が現れるので、応用が利く。短期間で目的の化合物を発見できたのは、日本での研究者時代に学んだこの方法のおかげだ。

株価下落は「真摯に受け止める」

――加齢黄斑変性の患者はどのくらいいるのか。

患者数は世界で1億2700万人といわれているが、日本などは末期のウエット型になってからのカウントで、(初期の)ドライタイプは含まれていないことも多い。潜在的なマーケットは2.5兆~3兆円と言われている。

3月から米国で臨床試験第2b/3相に入った。50病院で508人、24カ月かけて治験を行う。1日1回1錠の飲み薬はほかになく、認可されれば大きなマーケットがあると考えている。

当面は加齢黄斑変性に集中し、続けて適用範囲の拡大を図るため、糖尿病性網膜症や網膜色素変性症などの研究を進めている。また、大塚製薬の持つ緑内障治療剤の共同研究も進めている。加齢黄斑変性治療剤の米国での販売は大塚製薬と半々、EUはアキュセラ、日本は大塚という分担になっている。医薬品の販売はFDAの認可次第でいつから販売開始、とはいえないが、そろそろ販売ネットワーク構築の検討も始めている。

――上場後、株価が下がり続けているが

投資家のみなさんからの評価なので、真摯に受け止めなければならないと思う。ただ、当社は製薬ベンチャー。開発中の薬が世に出るまでに長い時間がかかるので、長い目で見て、育てていただければと考えている。

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