吉岡「まあ、若干言い過ぎかもしれないけどね。少なくとも、自分の責任の範囲を後で線引きし直している、とは言えるだろうね。最初は『自分の言うとおりやれ!』と言っていたのに、物事がうまくいかなくなると『もっと主体性を持って取り組め』と、手のひらを返したように相手のせいにする」
A「そういう人って、ときどきいますよね。誰とはあえて言いたくないけど……」
吉岡「上下関係が主になっている組織は、必然的に上が下を利用して利益を得る仕組みになっている。下が一生懸命やっても、その業績は上の手柄にする。その一方で、失敗しても、上はなかなか責任を取らない。むしろ、下のやる気不足のせいにする。上の人だって、自分の地位を守らねばならないから、こういう行動は当然と言っていい」
A「ボクも上の立場になったら、そうするかも……」
吉岡「人間なんて、その程度のものだよ。聖人君子を求めても仕方ない」
A「そのからくりが直観的にわかっているから、シャカリキになっても仕方がないと感じてしまう。だから、ボクたちは『さとり世代』と呼ばれるのかも」
吉岡「会社の『日本型組織』の歴史もけっこう長いからね。君たちには、3代にわたって会社員という人もいるだろう。お父さん、お祖父さんの仕事ぶりを見ていれば、何となく感じはわかるはずだよ」
「主体性を持っている人」は会社になじまないのか?
A「だいたい、ホントに主体性を持った人はサラリーマンはやっていないかもしれませんね」
吉岡「独立したほうが同じ仕事をやっても、自分が手にできるおカネの額は格段に違うからね。ただ、おカネになる仕事は、それなりに見つけることが大変なんだ。簡単に見つかるものは、もうすでに誰かがやっている。持続的に利益になるなら、会社が組織される。皆、そのシステムに乗っかって、自分の必要なおカネを稼ぐわけ。でも、たまに経済的に『主体性を持った人』がいて、自分なりにおカネになる仕事を見つけたり、自分で仕事を作れたりする」
A「ただ、若いうちから、なかなかそういうことはできにくいですよね」
吉岡「そりゃそうだよ。世の中にどんな仕事があるか、全体の位置がだいたいわからないと、手薄なところがどこにあるかもわからない。だから、主体性を持った人は会社の仕事をやりつつも、そういう可能性をいつも探っている」
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