プロポーズはコンビニで…37歳同士の結婚の形 上昇志向の塊だった彼女に訪れた転機

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ちなみにこのメール文章はほぼ原文のままである。雅美さんの知性とこじれた感じがよく出ている文面だと思う。なお、結婚には人間性が何より大切、と気づいた原因は仕事中心の生活への疲れだけではない。32歳のときに焦りという闇に落ちて婚約破棄を経験したことが大きい。Zoomミーティングを予約して雅美さんの話を聞くことにした。

「同い年の男性と2年付き合っていました。社労士の資格もあるエリートです。でも、お互いに適齢期だから結婚を見据えて付き合っていただけで、愛情や思いやる気持ちはありませんでした。相性が悪かったのだと思います」

雅美さんは細かいことを覚えている。埼玉県の観光地でデートをした際、ご当地の緑茶を購入したところ、一般的なお茶よりは高くついた。外食はほとんどしない節約家の彼は「家計は任せられないな」と冷たくコメント。おいしく楽しく過ごす時間にはお金をかけてもいいと思う雅美さんは心が離れるのを感じた。

婚約破棄の後、新たな出会いを求めて奔走

決定的だったのは新居の準備を始めたときのことだ。あるとき彼の実家から物資が大量に送られてきた。フルーツグラノーラ10袋、タオル300枚、サイズが合わないキッチンマット……。まずはカーテンや食器などを彼と一緒に買いそろえたいと思っていた雅美さんはめまいを覚えた。

「彼は一人暮らしをしたことがないので、新居に何が必要なのかをわかっていないのです。しかも、マザコン気味で、何でもお母さん頼り。『収納できないのでいったん実家に持って帰って』とお願いしたら、『せっかく送ってくれた親の気持ちを考えろ!』とキレられて。この人との結婚生活はマジ無理、と思いました……」

婚約を解消した雅美さんは、「無駄にした2年間」を取り戻す勢いで婚活を始める。上司の紹介でお見合いもしつつ、結婚相談所にも登録。半年間で30人以上と会った。しかし、「仮交際」などと言われても気持ちがまったく追いつかない自分がいた。

「私は美大出身で、どちらかと言えば(感性を司る)右脳人間です。でも、仕事で(論理や計算を司る)左脳を使いすぎて、婚活でも相手の仕事や職業、家柄ばかりを見てしまっていました。ある程度年齢を重ねると誰とでも話を合わせられるようになりますよね。それで本来の自分を押し殺してしまっていたのだと思います」

結婚相談所を退会し、社会人サークルなどに通い始めた雅美さん。感性や感覚が合いそうな人の中に身を置き、恋人ではなく友だちをまずは作り、そこから結婚相手を探す戦略である。スナック大宮もその「場」の1つだったのだろう。

この気づきと実行は諸刃の剣だと筆者は思う。自分に素直になることは大切だけれど、その副作用として客観的に自分を見る目を失い、若い頃の恋愛のような感覚で異性を求め始める可能性もある。すると、遊び上手だけれど不誠実な男性が寄って来やすくなり、結婚とはますます遠ざかる。

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