コロナ禍での子どもたちの部活動。批判もある中、社会や大人はどう考え、行動していけばいいのだろうか。
『子どもの権利とスポーツの原則』(Children’s Rights in Sport Principles)という文書がある。ユニセフ(国連児童基金)と公益財団法人・日本ユニセフ協会が2018年に発表したもので、スポーツと子どもの課題に特化した文書はユニセフでも初めてだった。パワハラやオーバーユース(ひじの酷使など)などから子どもを守るための文書で、その背景には日本も批准している「子どもの権利条約」がある。
文書の起草委員会メンバーで、スポーツ界の法的問題に詳しい東京の高松政裕弁護士(45)は「子どもたちには自由に楽しくスポーツをする権利がある」と話す。
「学校が再開した今、『部活をやるな』というのはおかしな話です。子どもに責任はまったくありません。ガイドラインを作って、それにのっとってやる。それでもクラスターが発生したときのために、社会に向けて説明・対話できる態勢を大人が作っておく。批判的な人も納得させられるよう、適切に対処するのも大人の役目です」
勝利至上主義を考え直すきっかけに
子どもの権利の観点から、コロナ禍によるポジティブな変化にも期待していると高松弁護士は言う。
「パワハラとかしごきとか、結局、勝利至上主義に起因しています。でも、例えば今回、高校野球(の春の甲子園大会)は交流試合という新しい形になった。その過程で関係者はいろいろ考えたのではないでしょうか。
今までは『甲子園と言えばこうあるべきだ』という固定観念が定着していましたが、これを機に勝利至上主義よりも選手の健康が重要という価値観に変わってくるかもしれない。子どもたちのために、考え直すきっかけになったのではないかと思います」
中央学院高校サッカー部の浜田監督は、保健体育科教諭でもある。8月に取材に出向くと、「部活動は子どもたちがサッカーをするためだけの場所ではありません」と力を込めて語った。
「グラウンドには、教室で教えられないことがいっぱいあるんです。生活のこと、友達付き合いのこと。その子が何に頑張っているかも気づけます。だから、必要な対策を講じながらできるだけ活動を止めず、子どもたちにこの場を確保するのも本当に大事だと思っています」
副キャプテンの藤岡さんは、トレーニングの合間に近況を語ってくれた。隣には野球部の練習場がある。
「野球部の3年生が最近引退したんですが、声をかけてくれました。『サッカー部、頑張って』って。競技は異なりますが、ハードな練習に取り組んできたスポーツ仲間です。全国大会が中止になってしまった彼らの分も、最後まで頑張りたいと思っています」
取材:益田美樹=フロントラインプレス(Frontline Press)所属
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