団体競技のサッカー部にとって感染症対策の必要性は、今年に限ったことではない。例えば、毎年流行するインフルエンザ。中央学院高校サッカー部は寮に隔離部屋を設けており、これまでも体調に異変があると部員が申し出ると、いったん隔離し、部内での感染拡大を防いできた。
2年生の寮生部員、西田武生さん(17)も「感染症対策を徹底するだけ。先輩たちのように自分も今できることに集中したい」と話す。半年後に迫ってきた新チームのスタートを見据えているのだ。
一方、「異例」が連続する展開に、保護者たちの心中は複雑だ。その1人、皆川千恵子さん(43)は「感染者が出てしまったら、という恐怖が頭から離れません」と打ち明ける。
皆川さんの長男を含め、部員の大半は幼児のころからサッカーに親しみ、多くの時間をサッカーに費やしてきた。親元から遠く離れて高校に進学し、寮生活をしながらサッカーに集中してきた子どもも少なくない。皆川さんの息子は自宅通いだが、すぐそばにいるからこそ、この状況で息子にどう接していいか悩んだという。
「うちはこれまで、部活のことには口を出さないでいましたが、ひと言だけ、息子に伝えました。『腐らないでね』って」
自宅生ならではの心配もある。
「息子は通学で電車に乗ります。乗車前後に指先を除菌できるよう、消毒液を小瓶に入れて持たせています。1人でも感染してしまうと、皆が試合に出られなくなってしまいますから」
何を優先すべきなのかを自問自答する日々
高齢の母と同居し、家庭内感染にも神経をすり減らしてきた。部活が再開してからずっと、何を優先すべきなのかを自問自答する日々が続く。社会の風当たりも気になる。
「最近、部活への批判やお叱りの声があるとニュースで聞いています。ただ、サッカー部に限らず、子どもたちは窮屈な状態でも気を配りながら、大会開催に希望を持って前向きに頑張っている。関係者の方々も、なんとか環境を整えてあげたいと努力してくださって……。それに感謝し、子どもたちにはできる限り練習や試合をやらせてあげたい。それが正直な気持ちです」
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