コロナ禍の高校運動部、大人は何ができるか 「スポーツと子どもの権利」当事者の悪戦苦闘

✎ 1〜 ✎ 130 ✎ 131 ✎ 132 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

インターハイ出場を目指していた高校生は約120万人に上るとされ、野球なども含め多くの3年生は、夏が終われば引退する。しかし、サッカーをはじめとする一部競技は、夏で終わらない。男子だけで全国に4000校以上あるサッカー部は、冬に全国高校サッカー選手権がある。藤岡さんも練習再開となった6月以降、副キャプテンとして仲間を引っ張っている。

幸い、選手権大会の千葉県予選は、9月開催が決定。藤岡さんらの中央学院高校も9月19日の3回戦から出場することになった。全国大会も開催する方向で準備が進んでいるとの報道もあった。

しかし、立正大淞南高校のような事態が起きれば、「最後の冬」はどうなるのか。部活関係者の不安は消えない。肝心なのは、まず部活内での感染症対策だ。中央学院高校サッカー部は部員106人。寮生も44人いる。予選出場を確実にするためにも、移動時のマスク着用、手洗いの徹底など、1人ひとりの対策励行が生命線だ。

浜田寛之監督(49)はこう説明する。声は野太い。

「歯磨きと一緒。『習慣にしよう!』と言ってきました。自分たちでできることはすべてやる。子どもたちも、忘れずにできるようになってきました。遠征の際も、隔離された環境で宿泊するなど最大限の対策を取っています」

中央学院高校サッカー部の浜田寛之監督(撮影:益田美樹)

「大人よりずっと対策しています」

浜田監督は「対策をしたうえで感染したなら仕方がない」とも言う。試合に参加できなくなるリスク。それもはっきりと部員に伝えている。

「夜の繁華街に出る大人より、子どもたちはよっぽど気をつけて生活をしています。でも、どれだけ念入りに対策しても感染は完全に防げない。淞南さん(立正大淞南高校)のことは、たまたま、淞南さんで起こっただけです。うちでも起こりえた。職場や家庭でも(リスクは)同じではないでしょうか」

「部員には『誰かが悪いんじゃないよ』と伝えています。ウイルスは見えない相手でもあるし、ミス(感染)はサッカーと同じで完全にはなくせません。大事なのはミス(感染)が起こった後にどうするかです。これもサッカーと同じ」

大切にしているのは「信頼関係」だという。

「子どもが体調に異変を感じたときに、すぐ大人に申し出るという信頼関係です。『言えば怒られるんじゃないか』と子どもが委縮しないように。関係づくりは長年、心がけています」

次ページ母はひと言だけ「腐らないでね」
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事