老後資金を増やす「年金の受け取り方」のコツ 2022年からの年金改正をおトクに活用しよう

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最後は、サラリーマンではない人のケースです。

【ケース3】
50歳独身男性。フリーランスの編集者。貯金は1000万円。iDeCoには加入しているが、かつて国民年金を払っていない時期が10年ほどあった。

この場合、公的年金の受給額はとても少なくなります。退職金も企業年金もないので、iDeCoや小規模企業共済といった個人でできる資産形成制度をフルに活用すべきです。

フリーランスで仕事をしているので定年はありませんから、頑張って能力が発揮できれば生涯現役も可能です。理想は75歳まで働き、そこから84%割り増しされた国民年金を受け取ること。そのために、iDeCoに65歳まで15年間加入します。

過去に国民年金を払っていない期間が10年あるので、60歳以降も国民年金に任意加入すればiDeCoには入れます。小規模企業共済も加入年齢制限はありませんから、働いているうちは入るべきでしょう。フリーランスの場合、掛け金が大きいのでiDeCoを限度額いっぱい15年間積み立てれば、金額は1224万円となりますし、加えて所得控除でも数百万円戻ってきます。

小規模企業共済もiDeCoとほぼ同じぐらいの金額を掛けることができますから、自分でリタイアメント資金をこしらえるとともに、公的年金の受給開始を遅らせるのがベストな選択肢でしょう。

できるだけ長く働き、公的年金は繰り下げる

いずれのケースも「長く働く」というのが基本ではありますが、繰り下げると支給額が増える公的年金はできるだけ後ろ倒しにし、企業年金やiDeCoなどの私的年金は「働く、働かない」や「いつまで公的年金を遅らせるか」という方針に合わせて、柔軟に受け取り方を検討すればよいと思います。

ポイントをまとめておきましょう。

① 働けるのであれば、できるだけ長く働く
② 公的年金はできるだけ繰り下げるようにする
③ 状況に合わせて私的年金は受け取り方を工夫し、場合によっては早く受け取る

それぞれ税制が少しずつ異なりますので、自分でよく考えて、自分にとっての最適な組み合わせを考えることが大切でしょう。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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