「リバースモーゲージ」借金嫌う日本人の大誤解 「死後に自宅を遺族に残せない」は本当なのか

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そもそもリバースモーゲージは、元本の回収を利用者の死後の物件売却によって行うため、将来の資産価値の下落リスクを金融機関が負担しなくてはいけない。このリスクが大きいため、なかなか商品が提供されてこなかった。

だが、リ・バース60では、住宅金融支援機構が保険を提供し、そのリスクをカバーする。これによって民間金融機関は資産価値下落のリスクを負うことなく、リバースモーゲージを提供できるのだ。

国の住宅政策を担う機関がこのように利便性の高い商品を提供する背景には、高齢化社会に向けて国民の幸せな生活を実現したいという政策方針があると考えられる。加えて、健康寿命が延びることによる介護保険への負担を軽減させる狙いもあるだろう。

「悪」と決めつけず合理的な選択を

「リバースモーゲージを利用するのは怖い」という声を発する人の中には、リスクばかりを見て合理的な選択ができていないケースも多い。もし今、コロナ禍において逼迫した状況であるのならば、この制度は資金を得る立派な手段の1つだ。

一時的に利用して苦境を抜け出し、家庭の経済状況を鑑みて繰リ上げ返済をする方法だって検討できる。とくに下記のような方には、リバースモーゲージを「悪」と決めつけるのではなく、正確に商品性を理解して利用を検討してもらいたい。

1. 住宅ローンの残高があって毎月の返済がつらい人
2. 資産価値の高い自宅を保有しているが、貯蓄が少なく生活に困っている人
3. 相続人がいない、または子どもに残す考えがなく、今後の生活を充実させたい人

リバースモーゲージには、よく「老後の住まいを豊かにする」という表現が用いられる。ただ恐怖心にさいなまれるのではなく、自分にはどのような方法が最適なのかを合理的に選択できることが、「豊か」につながるのかもしれない。

中山田 明 MFS代表取締役CEO

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なかやまだ あきら / Nakayamada Akira

1967年生まれ。住宅ローン専門家。1999年ベアスターンズ証券にて日本初の住宅ローン証券化を担当。その後、新生銀行にて総額5,000億円以上の住宅ローンを証券化。2011年からはSBIモーゲージ(現アルヒ)入社、2012年よりCFOを歴任。2014年にオンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」を運営するMFSを創業。テクノロジーで住宅ローンの借り入れ・借り換えをより簡単にするサービスの提供を続けている。

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