「リバースモーゲージ」借金嫌う日本人の大誤解 「死後に自宅を遺族に残せない」は本当なのか

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② 元金の返済ができない場合は、残された配偶者は家を出る必要がある?

これも誤解している人が多い。借入人が死亡した場合、配偶者は自宅を出ていかなければいけないと思っている。そのため生活が苦しくても、リバースモーゲージの活用を拒否するケースが出てくる。

契約内容にもよるが、配偶者に引き継げるような契約にしている金融機関は多い。借入人の死亡後に「自宅を売却するから、居住人である配偶者は出ていってください」というリスクは回避することができるのだ。

そのほかにも、リバースモーゲージには「資金使途は住宅購入、建て替え、リフォーム、借り換えなど」「自宅売却で全額返済できなくても、配偶者や相続人に返済義務はない」「借り入れ後、資産価値が下がっても追加の担保提供や元本返済は不要」といった特徴がある。

「夢」だけが詰まった制度ではない!

ここまで聞くと、高齢者にとっては夢のような商品にも聞こえるが、もちろん考慮しなければいけない点もある。考えるべきリスクは3つだ。

まずは「長生きリスク」。金融機関からの融資額は限度があるため、長生きすればするほど、借り入れした資金では生計が成り立たなくなるリスクがある。借入人が死亡するまで毎月金利の支払いは発生するため、総計したら思いがけない金額を払うケースは出てくるかもしれない。

次に「金利上昇リスク」だ。リバースモーゲージの金利は、契約期間中であっても定期的に見直される「変動金利」が採用されている。毎月の返済は利息のみとなるが、将来金利が上昇した場合は、毎月の利息負担は増えてしまうリスクがある。

例えば2000万円を借り入れしていて、金利が1%上昇すると年間20万円(毎月では1万6000円程度)の負担増となる。年金生活のシニアにとっては痛い出費となることは間違いない。

3つ目は「団体信用生命保険(団信)に入れないリスク」だ。住宅ローンであれば、団信への加入が義務づけられており、死亡や高度障害になると保険金で住宅ローンが完済される。リバースモーゲージではそのような保険はないので、注意が必要だ。

最近ではより幅広い物件に対応ができ、リスクを軽減できる仕組みが登場してきている。それが、国の住宅政策を推進する役割を担っている、住宅金融支援機構が取り扱う「リ・バース60」だ。

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