「モテないオスは淘汰される」自然界の厳しい掟 オスは自分の遺伝子残せないカブリダニの悲哀

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「進化」という言葉は、「進む」という字が入っているから優れたものに変化すると思われる人も多いようですが、そうじゃないんです。

生物がどのように進化するかは、すべては環境が決めることです。そのときの生息環境において不利な形質=遺伝子は排除される。その環境で生き抜くうえで必要な形質であれば、より特殊化する。それまで有利だった形質が、環境の変化とともに消失する。あるべき形質・機能が姿を消す。人はそれを「退化」と呼びますが、それも進化です。

なぜ人類から「尻尾」が消えたのか

そう、太古の昔、人類にあったはずの尾がなくなったのは、進化なんです。必要がなくなったから、尾がないほうに進化したんです。

洞窟など、暗黒下で生息する動物の多くの目が退化しているのも、利用価値のない目を作る資源やエネルギーをほかの器官や細胞の成長に回したほうが得だということで目を作らない方向に進化したのです。

しかし、洞窟という生息環境が失われれば、目がないことが不利になって、絶滅してしまう種も出てくると考えられます。そのときそのときの環境で有利・不利が決まり、それまで圧倒的多数を占めていた形質や系統が突然消滅する。それが生物の進化の原理なのです。

話をカブリダニのオスに戻します。私も男ですから、遺伝子が使われないカブリダニのオスの不憫さには同情します。元はといえば、カブリダニのオスも、精子の運び屋にすぎなかったからこそ、遺伝子の交換が不要になればお役御免となったわけです。いってみればカブリダニのオス(の精子)は、メスの淘汰を受けて消滅したことになります。

結局、子どもを生むという機能がメスにある限り、メスが消滅することは絶対にありません。しかし、オスの方は、精子の運び屋にすぎないので、すべてのオスが生き残る必要はなく、最悪、ゼロになる(無性生殖)という憂き目にあうおそれもあります。オスが生殖にたどり着き、自分の遺伝子を残せるか否かの命運はメスに握られているのです。次はこのメスによる淘汰=「性淘汰」の話をしていきます。

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