「モテないオスは淘汰される」自然界の厳しい掟 オスは自分の遺伝子残せないカブリダニの悲哀

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生殖の競争というのは、優秀な遺伝子の取り合いになっています。生物にとっては、別種はおろか、同種であっても、すべて他個体は敵で、とにかく他個体よりも自分の遺伝子を少しでも多く残すことが重要となります。

このときメスとオスの間には不平等が生じます。子どもを生むことができるメスは圧倒的にオスにモテます。なぜならオスは子どもを生めないから。なので、オスはなにがなんでもメスを確保する必要がありますし、できれば少しでも多くのメスに自分の精子を与えることが自分の遺伝子のコピーを増やすことにつながるので、すべてのメスは、確実にオスに求められるのです。

一方のオスは、必ずしも全員がモテるわけではありません。メスにしてみれば、オス全員を受け入れる必要はなく、むしろ自分の卵子に少しでもふさわしい優秀なオスにだけ交尾をさせて、「エリート」な子ども(つまり、生き残る力、繁殖する力の強い子ども)を生むほうが、最終的に自分の遺伝子のコピーをこの世に広げるうえで得になります。

そこで、メスはオス同士の間で力比べをさせて、オス間競争に勝ち残った強いオスだけを選ぶように進化します。これがメスによるオスの淘汰=「性淘汰」といいます。

オスは「使い捨て」の存在

百獣の王ライオンの群れのリーダーは、成熟したオスです。リーダーは数頭〜十数頭のメスを従えたハーレムを形成します。

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オスがメスを従えていると書きましたが、実際にはメス集団が強いオスを1頭だけ選んでいるのです。強さはオス同士のケンカで決まります。

メスにとっては、広い縄張りを確保できる強いオスの遺伝子があれば、自分の子どももまた強い個体となって生き残る確率が高くなると期待できます。

もし、逆にメス同士に争いをさせるとどうなるでしょう。争いに負けたメスは、群れを去るか、殺されてしまうことになります。種全体にとってメスを1頭喪失するのは大きな問題です。

オスが1頭いなくなるのはたいしたことじゃない(笑)。そういう意味でもオスは使い捨てなんですね。

五箇 公一 生物学者

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ごか こういち / Kouichi Goka

1990年、京都大学大学院修士課程修了。同年宇部興産株式会社入社。1996年、博士号取得。同年12月から国立環境研究所に転じ、現在は生態リスク評価・対策研究室室長。専門は保全生態学、農薬科学、ダニ学。国や自治体の政策にかかわる多数の委員会および大学の非常勤講師を務めるとともに、テレビや新聞などマスコミを通じて環境科学の普及に力を入れている。

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