中国の半導体受託製造(ファウンドリ)最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)に対してアメリカ政府が制裁を検討しているとの報道を受けて、9月5日、同社は緊急の声明を発表した。SMICの製品およびサービスはすべて民生向けであり、軍事目的の経営行為や中国軍との関係は一切ないとしている。
声明はさらに、SMICは(半導体製造装置の調達や製品の販売などで)関係する各国の法令を厳格に遵守しており、同社がアメリカ製の設備を購入する際にアメリカ商務省は長年にわたって輸出許可を与えてきたと説明。そのうえで次のように意思表示した。
「われわれは(報道に)驚き、困惑している。SMICは誠実、オープンかつ透明性のある方法でアメリカ政府の関係機関とコミュニケーションを図り、偏見や誤解の可能性を解消したい」
なお、問題の報道は9月4日、ロイター通信がアメリカ国防総省関係者の話として、「アメリカ政府がSMICをエンティティー・リスト(訳注:アメリカの安全保障や外交政策上の利益に反すると判断された企業等のリストで、事実上の禁輸対象)に加えるかどうか検討している」と伝えたもの。仮に制裁が現実になれば、SMICはアメリカ由来の技術が使われた製造装置、ソフトウェア、材料などの供給を断たれかねない。
アメリカの技術抜きでは生産ライン構築できず
今日の半導体産業はグローバルな分業体制を前提に成り立っている。アメリカ企業からの安定調達はSMICにとって死活問題だ。2019年に同社の調達金額が最も大きかったサプライヤーは半導体製造装置で世界最大手のアメリカのアプライドマテリアルズであり、第3位は同じくアメリカの半導体製造装置大手のラムリサーチだった。
中国国内の複数の専門家によれば、アメリカの技術を抜きにしては十数年前のプロセス技術である45nm(ナノメートル)の半導体チップの生産ラインも構築できないという。プロセス技術でトップを走るファウンドリ世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、すでに5nmの量産を実現している。これに対し、SMICは3世代遅れの14nmの量産を2019年10~12月期にようやく開始した段階だ。
対SMICの制裁検討が明らかになったことで、中国半導体業界の行く手に立ちこめる暗雲は一段と色濃さを増した。中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対してアメリカ政府が発動した制裁により、TSMCは9月14日以降、ファーウェイ向けの出荷を停止する予定だ。もしSMICが禁輸リストに加えられたら、ファーウェイがTSMCに代わる半導体の製造委託先を失うのはもちろん、中国国内の多数の半導体設計会社にも打撃が及ぶのが避けられない。
(財新記者:葉展旗)
※原文の配信は9月6日
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