中国では高度な自動運転を実現する「インフラ協調型」システムの試験導入が、全国各地の都市で進んでいる。ところが、その現場はシステムの全体設計や運営のあり方など、多数の難題に直面している。
「ある都市の政府はシステム導入に前向きだが、その狙いは企業誘致でしかなく、進出した企業がいざ実行しようとしてもうまくゆかない。またある都市では政府は本気だが、非常に新しい技術であり、しかも複数の業界をまたぐため、地方の官僚の職務権限を往々にして超えてしまう」。官民一体の電気自動車(EV)の普及促進団体である中国電動汽車百人会の張永偉秘書長は、8月22日に開催されたフォーラムでそう述べた。
インフラ協調型の自動運転システムとは、5G(第5世代移動通信)ネットワーク、各種センサー、エッジコンピューティング(訳注:端末に近い場所にサーバーを分散設置してデータ処理を行う技術)などを統合することにより、自動運転車両と道路インフラのデータ連携を実現するものだ。
車両に搭載した機器だけに頼って自動運転を行う「自律型」に比べ、道路の状況をより全面的に把握できる利点がある。中国政府は自動運転技術の高度化や交通渋滞の緩和に向けた切り札として位置付けており、すでに50を超える都市で試験導入が始まっている。
設備が使われず放置されるケースも
だが前出の張氏によれば、それらの試験導入は問題だらけだ。多くの都市ではシステム構築そのものが目的になり、誰が主体となって推進するのかが不明瞭で、全体のビジョンが定まっていない。例えば、ある参画企業は「もっと多くのサーバーが必要だ」と主張し、別の参画企業は「道路側により多くのセンサーが必要だ」と求めるという具合に、地元政府に対する提案がバラバラで誰も意見をまとめられない状況に陥っている。
事情に詳しい専門家によれば、これらの都市では「インフラ協調型システムで何をするのか」も明確になっていない段階で、多数の関係者が「まずは先発利権を押さえよう」と野放図な参入に走った。全体計画のビジョンが欠落しているため、いち早く試験導入に踏み切った都市では次々に問題が露呈しているのが実態だ。
例えば一部の都市では、システムの設計や構築を通信系の設備業者に任せていた。ところが設置工事が完了すると業者は手を引いてしまい、後には「インテリジェント化された道路インフラ」だけが残された。それを有効活用するアイデアも、システムを運営する担い手もなく、地元政府はお手上げ状態。結果として大量の設備が使われずに放置されるケースが珍しくないという。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は8月25日
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