中国・鉄鋼大手「宝山鋼鉄」上半期利益3割減の訳 新型コロナで自動車生産減り、鋼板需要が縮小

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鉄鉱石相場の高止まりが鉄鋼業界の利益を圧迫している。写真は宝山鋼鉄の熱間圧延ライン(同社ウェブサイトより)

中国の鉄鋼大手の宝山鋼鉄は8月27日、2020年1~6月期の決算を発表した。それによれば、今年上半期の売上高は前年同期比7.88%減の1297億7200万元(約2兆10億円)、純利益は同36.87%減の40億200万元(約617億円)だった。

宝山鋼鉄は世界最大の鉄鋼企業グループ、宝武鋼鉄集団の中核企業である。同社によれば、1~6月期は新型コロナウイルス流行の影響で鋼材の販売量と売価がともに下落した一方、原材料の鉄鉱石の市場価格が高止まりしたことが業績悪化の主因だという。

証券会社のレポートによれば、宝山鋼鉄は自動車用鋼板の中国最大のサプライヤーであり、なかでも自動車用冷間圧延鋼板の市場シェアは50%を超える。しかし自動車産業も新型コロナの流行で大きな痛手を負い、自動車の生産が減少。それが宝山鋼鉄の業績にダイレクトに響いた格好だ。

鉄鉱石相場の高止まりで製品の粗利率が低下

さらに鉄鋼石相場の高止まりが鉄鋼製品の原価率を押し上げ、宝山鋼鉄の利益を圧迫した。中国鋼鉄工業協会の鋼材価格総合指数は1~6月の平均値が100.98と前年同期比7.8%低下したのに対し、鉄鉱石の代表的な価格指標の1つであるプラッツ指数の平均値は鉄含有62%の鉱石1トン当たり91.1ドル(約9677円)と、前年同期と同水準の高値を維持した。

コストの上昇圧力を吸収しきれず、宝山鋼鉄の主力製品は粗利率が全体的に下降。製品別では冷間圧延鋼板コイルの粗利率は前年同期比0.4ポイント改善したものの、熱間圧延鋼板コイルは同1.7ポイント、鋼管製品は同3.7ポイントそれぞれ低下した。

本記事は「財新」の提供記事です

今年後半に入り、鉄鉱石相場はさらなる上昇を続けている。8月19日のプラッツ指数は1トン当たり128.8ドル(約1万3681円)と、2014年以来の最高値を記録。1~6月期の平均値に比べて41.4%上昇した。

その後の8月26日時点で、プラッツ指数は12営業日連続で1トン当たり120ドル(約1万2746円)を上回る水準で推移しており、宝山鋼鉄にとって厳しい経営環境が続く。

(財新記者:趙煊)
※原文の配信は8月28日

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