「アフリカのスマホ王」の異名を取る中国のスマートフォンメーカー、傳音控股(トランション・ホールディングス)の業績が好調だ。
上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板」に上場する同社は、8月26日、2020年1~6月期の決算報告を発表。上半期の売上高は前年同期比31.81%増の138億4600万元(約2132億円)、純利益は同33.42%増の10億9100万元(約168億円)と、新型コロナウイルスの世界的大流行にもかかわらずアナリストの事前予想を上回る成長を達成した。
広東省深圳市に本社を置くトランションは、製品をローエンドのスマートフォンに特化し、そのほとんどを所得水準の低い開発途上国で販売する戦略を取る。アフリカ、南アジア、東南アジア、中東、南アメリカなど世界70カ国余りに進出しており、なかでもアフリカで高い市場シェアを獲得したことから冒頭の異名がついた(訳注:調査会社のデータによれば、トランションはアフリカのスマホ市場で約4割のシェアを持つ)。
同社によれば、1~6月期の売上高と純利益が大きく伸びた要因は、アフリカ市場での安定した成長と新たに進出した市場での販売増加だという。証券会社の調査リポートによれば、1~6月期はとくにパキスタンやバングラデシュなどでの躍進が成長を牽引した。
キーデバイスの調達難を警戒して先手
トランションのスマホ事業の売上高は、1~6月期は127億6000万元(約1965億円)と前年同期比31.57%増加し、総売上高の92%を占めた。アナリストによれば、7~9月期の業績も前年同期比3割前後の成長を維持する可能性が高い。
なお1~6月期の財務諸表で目を引いたのが、2020年6月末時点の棚卸し資産の金額が44億6100万元(約687億円)と、半年前の2019年12月末時点より42.3%も増加したことだ。棚卸し資産は部品などの原材料、生産途中の仕掛品、出荷前の完成品在庫などで構成されるが、なかでも原材料の帳簿価額が14億4800万元(約223億円)と、同じ期間に78%増加した。
これに関してトランションは、棚卸し資産の急増は「戦略的備蓄」によるものだと説明している。アナリストの分析によれば、同社は半導体などキーデバイスの調達難への懸念から在庫を大幅に積み増した模様だ。
ローエンドのスマホの大部分は台湾の半導体設計大手、聯発科技(メディアテック)のSoC(訳注:システムオンチップの略称。CPUや通信モデムなどの基幹部品を1つの基板にまとめたもの)を搭載している。
しかし最近、メディアテックは5G(第5世代移動通信)のハイエンド向けSoCの出荷が好調であり、トランションは4G向けSoCの供給が後回しになることを警戒して先手を打った可能性がある。
(財新記者:屈慧)
※原文の配信は8月27日
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