長谷工が今、「タワマン」に力を入れ始める理由 郊外では全部屋100平米のマンションも視野

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――コロナは住宅志向に影響を与えましたか。

グループ内の販売会社がアンケートを取ったところ、通勤距離よりも部屋の広さや住環境の優先順位が高まっていることがわかった。当社が販売を請け負っている郊外物件の中には、緊急事態宣言解除後に売れ行きが上がったものもあり、郊外の評価が高まっていることを感じている。

いけがみ・かずお/1957年生まれ。1980年長谷川工務店(現・長谷工コーポレーション)入社。執行役員設計部門エンジニアリング事業部長、取締役執行役、取締役専務執行役員などを経て、2020年4月より現職(編集部撮影)

広さ重視の流れを受けて、当社でも郊外に1部屋あたりの広さが100平方メートルほどのマンションを作る構想がある。面積が広いと価格が上がってしまうので、千葉県の四街道や八幡宿など土地代の安い郊外が対象になるだろう。

(駅チカというマンションのトレンドに対して)郊外の広いマンションという新しいマーケットを開拓していけるような、メッセージ性のある物件にしたい。そのためには、1列だけ100平方メートルでは意味がない。全部屋が100平方メートル、というくらいのインパクトを出していきたい。

住宅の「工業製品化」に一石

――住宅ニーズが多様化しそうです。

これまでの住宅は供給者の論理で動いていた。効率性を優先し、少ない品種を大量に供給する「少品種多量」だ。100人いたら70人がOKだったら良しとされていた。ただ、社内の若手や中堅社員と話をしていると、みな「少量多品種」という言葉に反応する。住宅はそうあるべきだよね、と。これからは「少品種多量」から「少量多品種」のものづくりにも踏み込んでいきたい。

コロナ禍で業務のデジタル化を標榜する企業が増えたが、当社でも設計業務の3次元化を筆頭にデジタル化を推進してきた。業務効率化やビッグデータの活用も目的ではあるが、最終目標は一品モノの住宅を生産することだと思っている。

デジタル化によって設計や施工の手間が省けるようになれば、お客のニーズを反映した住宅を提供できるようになるかもしれない。現時点では技術的な課題はあるが、好みの間取りを作れるということも可能になるのではないか。そんな夢を抱いている。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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