長谷工が今、「タワマン」に力を入れ始める理由

郊外では全部屋100平米のマンションも視野

マンション工事の巨人が考えるコロナ禍での住まいとは(撮影:今祥雄)
人口減少による需要の縮小という中長期的な課題を抱えていた新築マンション業界にとって、コロナ禍はさらなる頭痛の種となりそうだ。テレワークの普及によって郊外や都心、駅チカといった人気条件の「鉄板」が揺らいでいるほか、面積の広い戸建ての存在感も増している。これまで通りのマンション供給戦略は、通用しない可能性がある。

視界不良のマンション業界をどのように切り抜けるか。1969年に第1号物件を建設して以来、累計65万戸以上のマンションを施工してきた長谷工コーポレーションの池上一夫社長に聞いた。

タワーでも競争力をつける

――新築マンション市場は縮小が続いています。

当社は分譲マンションのうち板状(タワーではない一般的な大型マンション)の建設工事を主力として、首都圏では4割弱、近畿圏でもワンルームタイプを除けば3割弱のシェアを占めている。他方で、タワーマンションの施工シェアは首都圏で5%、近畿圏でも10%とまだまだ低い。これまでは板状だけで十分利益を稼いでいられたので、あえてタワーを積極的に受注する必要がなかった。

だが、人口や世帯数の減少に伴って新築マンション市場は縮小している。板状マンションの工事だけをやっていればいいという環境ではなくなってきた。受注量を確保すべく、板状で培ったノウハウを生かしてタワーの建設を強化していく。中長期的には年間受注工事の2割をタワマンが占めるような水準に持って行きたい。

――板状とタワーでは何が違うのでしょうか。

板状ではこれまでの施工実績を元に、施工費がいくらかかるかを高い精度で見積もることができる。企画段階で出した金額と、設計図ができあがって改めて精査したものとを比較しても、誤差はプラスマイナス1%程度。おかげで競争力のある価格で工事を受注できる。

一方で、タワーは板状に比べて実績が少なく、施工費を保守的に見積もらざるをえないため、受注を逃した案件もあった。そこで競争力のある価格を提示するために、毎年少ないながらも実績を積み上げ、2020年4月にはタワーの専門部署も立ち上げた。

そうして見積もりの精度が上がっていき、板状並みに利益が取れる案件も出てきた。タワークレーンの効率的な配置など、板状とは異なる施工計画の勘所もわかってきた。いよいよタワーの施工実績を本格的に伸ばしていく段階に来た。

――タワーの施工は大手ゼネコンが中心です。

他社の内情はトップシークレットだが、発注者であるデベロッパーから指値をされると、ほかのゼネコンはこれくらいの金額で請け負っているのか、という情報が徐々にわかってくる。幸い、大手デベロッパーからも「長谷工は板状だけでなくタワーも建てられる」という認識が広がっている。大手との競争の中でも勝ち残っていきたい。

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