経営者127万人「後継者不在」の切実すぎる問題

コロナ倒産回避のための事業承継は待ったなし

中小企業オーナーにとって最大の悩みは事業承継だ(デザイン:池田 梢)

東京都内で小さな印刷業を営む70代の男性は今年7月、社長仲間に誘われ、飲み会に参加した。「コロナの話は御法度ね」という当初の約束はどこへやら。参加者の1人がぼそっとつぶやいた。

「あいつの会社、倒産して自己破産したらしいぞ。めぼしい財産は全部持って行かれて、当面の生活費という名目で99万円しか残してもらえなかったらしい。離婚して一家離散だって。倒産は怖いわ」

そんな話を聞きながら、男性は自身の会社に思いを巡らせていた。ここ数年は技術の進歩についていけず、会社を維持していくので精一杯だったからだ。従業員たちのことを考えると、会社は潰したくない。しかし1人娘は嫁いでしまい、会社を継がせようにも後継者がいなかった。どうしようかと悩んでいるところに新型コロナに襲われてしまい、男性は「みんなを守るためにもどうにかしなければ」と暗澹(あんたん)たる気持ちになったという。

週刊東洋経済』9月7日発売号は、「得する事業承継 M&A」を特集。こうした倒産の憂き目に合わないように、後継者選び待ったなしの中小企業経営者がいかに相手を見つけ、そしてタイミング良く上手に事業承継して、手元に残る資金を殖やすノウハウを余すところなく紹介している。

中小企業の2025年問題が前倒し

中小企業経営者たちの多くが同じような悩みをかかえている。

中小企業庁が2016年度に中小企業の現状について調査したものによれば、70歳未満の経営者が約136万人なのに対し、70歳以上の経営者は約245万人と2倍近く、高齢化が進んでいることが分かる。そのうち、実に半数以上の127万人が「後継者が決まっていない」と答えている。

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その結果、61.4%の中小企業が、後継者に事業承継できなかったことで、黒字であるにもかかわらず休廃業や解散に追い込まれているのだ。それでなくても、中小企業の休廃業・解散件数は右肩上がり。5年間で1万社以上増加しており、〝黒字廃業予備軍〟が60万社はくだらないと見られている。

実は、こうした問題は以前から指摘されていた。経済産業省と中小企業庁の試算によれば、事業承継問題を解決しなければ廃業が急増、25年ごろまでの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるという。中小企業の「2025年問題」と呼ばれるものだ。

それが、2025年を待たずして到来してしまう可能性が高まっている。理由は、言わずもがなだが「新型コロナ」だ。東京商工リサーチの試算では、2020年に休廃業・解散する中小企業は5万件、倒産は1万件に達する見込み。それに伴って、事業承継できずに退場させられる会社が急増すると見られているからだ。

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