「早生まれは不利」の研究に感じる違和感の正体 その"客観的事実"が人々に植えつける心理

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わかりやすくするために、具体的に3月生まれで立派にやっている人や顕著な業績を挙げた個人を羅列してみます。こういう人たちは過去にも現代にもたくさんいます。

徳光和夫(3月3日)、熊川哲也(3月5日)、ミケランジェロ(3月6日)、サニブラウン・アブデル・ハキーム(3月6日)、あいみょん(3月6日)、水木しげる(3月8日)、米津玄師(3月10日)、松田聖子(3月10日)、白鵬(3月11日)、三木谷浩史(3月11日)、江崎玲於奈(3月12日)、吉永小百合(3月13日)、今田耕司(3月13日)、コロッケ(3月13日)、アインシュタイン(3月14日)、高橋大輔(3月16日)、渋沢栄一(3月16日)、香川真司(3月17日)、阿部慎之助(3月20日)、ロナウジーニョ(3月21日)、有働由美子(3月21日)、綾瀬はるか(3月24日)、羽鳥慎一(3月24日)、原田泰造(3月24日)、はいだしょうこ(3月25日)、丸山桂里奈(3月26日)、内田篤人(3月27日)、マライア・キャリー(3月27日)、レディー・ガガ(3月28日)、石田衣良(3月28日)、鈴木明子(3月28日)、滝沢秀明(3月29日)、坂本冬美(3月30日)、千原ジュニア(3月30日)、小川直也(3月31日)、バッハ(3月31日)

いかがでしょうか? 多士済々で、実にいろいろな分野で大活躍していますよね。私も誕生日が3月28日なので勇気づけられました。「早生まれは遅生まれより学力が低い」と統計が言っても、アインシュタインや江崎玲於奈は3月生まれなのです。「体力が低い」と言っても、阿部慎之助、白鵬、ロナウジーニョは3月生まれであり、「対人関係の苦手意識が高い」と言っても今田耕司や原田泰造は3月生まれなのです。

統計に左右されずその子自身を見ることが大切

ですから、統計的な傾向性はあったとしても、それで自分あるいはわが子がダメということには絶対にならないのです。個人差のほうがはるかに大きいということを胸に刻み込んでおきましょう。

同じことが、「左利きは○○」「長男は○○」「次男は○○」「長女は○○」「末っ子は○○」「関西人は○○」「関東人は○○」「日本人は○○」「中国人は○○」「アメリカ人は○○」などの話にも言えます。どの国にも立派な人もいればそうでない人もいるわけで、大切なのは自分がどうかということです。

ですから、こういう研究の成果を見て、いたずらに落ち込む方向にいくのはやめましょう。それは研究者の願っている方向でもないはずです。せっかくの研究成果ですから、よりよい方向で有効活用することが大事です。実際に、今回の研究でも山口教授によっていくつかの前向きな提案がなされています。

なかでも注目すべきは次の内容です。

「早生まれの子供は、同じ学年の遅生まれの子供に比べて認知能力と非認知能力がともに低い傾向が強いのですが、親御さんは、目につきやすく対策のしやすい認知能力の向上に偏重した投資をしてしまうケースが多いのです」
「早生まれの不利を跳ね返すために、親御さんは家で勉強や読書をさせたり、塾に通わせたりしますが、その分、子供同士で遊んだり、スポーツをしたりする時間が減り、非認知能力が育ちにくくなっている可能性があります」

近年、この非認知能力の重要性はさまざまな研究によって明らかになってきています。例えば、お茶の水女子大学名誉教授内田伸子先生の研究が有名です。その研究によると、難関大学に合格した子は、そうでない子に比べて、幼児期に自分がやりたいことをたっぷりやれていた、思い切り遊べていた、などの割合が顕著に高いとのことです。

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