「ポスト安倍」海外紙記者はここに注目している 米国には「また1年ごとに代わるのか」との声も

拡大
縮小

国際的にはどうか。日本に関する大きな懸念の1つは、次期首相候補の中に、短期的な課題を超えた政策を実行するのに必要な期間、首相の座を維持できる人物がいるのかどうか、という点だ。2012年に安倍氏が首相に返り咲くまで日本の首相は頻繁に交代していたが、こうした状況に逆戻りしてしまうのではないか、との心配が国内外に広がっている。

 

「ワシントンですら、『これは参った、また1年ごとに首相が代わる時代に逆戻りするのか』といった声が聞かれる」とスミス氏は言う。

安倍氏には、首相が次々と代わっていた時代には不可能であったような外交関係を構築する時間があった。これは最終的に、友好国とのさまざまな貿易協定や安全保障上のパートナーシップに結実した。

コロンビア大学の彦谷貴子准教授(政治学)が言う。「安倍氏にとって有利だったことの1つは、サミットで各国首脳が写真撮影に応じる際、安倍氏が新顔ではなかったことだ。この意味は大きい」。

太平洋地域での存在感を示せるか

アメリカの大統領選挙が間近に迫る中、日本の新たなリーダーは、近年内向き志向を強めている長年の同盟国との関係を巧みに操っていく必要に迫られる。

安倍氏の下で、日本は「アメリカが太平洋地域で大国としての存在感を示すのに消極的となる中、力の空白を部分的に穴埋めした」と、ワシントンのシンクタンク、ウィルソン・センターで北東アジア担当の上級研究員を務める後藤志保子氏は話す。同氏によると、後継と目される政治家の中に、太平洋地域で多国間関係を率いていく責任を引き継ぐことのできる人物がいるかどうかは怪しい。

日本は近年、激しさを増す中国の拡張路線に対して重石の役割を果たそうとしてきたが、中国は東シナ海や南シナ海で海洋進出を挑発的に展開し、香港の弾圧を強めている。

しかし安倍氏の辞任で政治が不安定な状態となれば、「過去の例が示すように中国は混乱につけ込んでくるに違いない」と、ランド研究所のホーナン氏は指摘する。

「次期首相が、軟弱もしくは不慣れ、あるいは力不足と見られるようなことがあれば、中国は日本がしばらく経験してこなかったような形で挑発行動を強めてくる可能性がある」(ホーナン氏)

(執筆:Motoko Rich東京支局長)
(C)2020 The New York Times News Services

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT