独裁に反旗「ベラルーシ」で今起きていること 直近の大統領選を受けて国民が立ち上がった

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「巨額の投資を受け、多くの優遇措置を与えられた業界が、この新たな革命の急先鋒となったわけだ」とリベル氏は述べた。「人は基本的なニーズに満足すると、自分がどのような国に住んでいるのかに注意を向け始めるんだ」。

政府の中央選挙管理委員会会長を務めるリディナ・イェルモシナ氏はそれに対し、ゴロスを「有害な犯罪」と呼んだ。リベル氏はウクライナへ逃亡した。ベラルーシ国内にいた下位レベルのチームメンバー6名が逮捕され、その後の彼らの消息は不明のままだ。

活動家たちの逮捕は、ルカシェンコ大統領がベラルーシの国家規模の小ささを利用してロシアよりもさらに抑圧的な保身機構を強化してきたことを明るみにした。ベラルーシは国土面積も人口もアメリカ・ミシガン州とほぼ同じだ。ロシアでも対立グループは危険に直面してはいるが、彼らの場合ははるかに大規模な組織化が可能だった。

「2つの極端な感情に引き裂かれたまま」

8月、スタートアップ企業創設者のダニロヴァ氏は、自宅に携帯電話を置いたまま友人たちの家に転がり込んだ。もし夫から、KGBが彼女を探しに来たと連絡が入れば、車に飛び乗って出国する計画だった。KGBはベラルーシの保安局として今でも知られている。

KGBはやって来なかった。ダニロヴァ氏は、たくさんのビーンバッグ・チェアが置かれ、従業員たちの写真がアートのように紐に吊るされている自身の会社へと戻った。彼女は自分が2つの極端な感情に引き裂かれたままだと話す。彼女が知るすべてのベラルーシの人々と同じように。

「十分にやり切ることができなかったという面目なさ、そして、あまりにもやりすぎて深刻な結果が待っているというおそろしさだ」と彼女は話す。

最近、朝の情報番組の司会を降ろされた46歳のダディンスキー氏は、インスタグラムで警察を批判した後に、彼と彼の妻は国主催のイベントの進行役の仕事からも外されたと言う。ダディンスキー氏はベラルーシでは誰もが知る有名人だ。仕事を辞めたり解雇されたりした何十人もの同僚たちと共に、自分は必ずテレビの仕事に復帰する、と彼は主張している。政治システムさえ変われば必ず復帰すると。

「ベラルーシの人々に、過去26年間入れられていた箱に戻れと強いるのはもはや現実的ではない」と彼は話す。「ベラルーシ人たちの中で何かが壊れたのです。ヒューズが飛んだんだ」。

(執筆:Anton Troianovski記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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