もちろん、電話やオンラインで会話をする方が、用件が伝わりやすかったり、議論が進めやすかったりする場合はある。コミュニケーションの手段は使い分けるべきだが、大きな原則は「相手の時間に気を遣うこと」だ。
「目利きのバンカー」はファンタジー
その3.「会社の将来がわかる」と思うな
シーズン2のストーリー上、1つ気になった台詞があった。
経営再建を目指す上でコスト削減のために退職して貰う社員の受け入れ先に悩む帝国航空の経営幹部に対して、LCC(格安航空会社)が500人の人員を受け入れることを伝える際に、半沢は「〇〇社が今後成長するであろうことは、バンカーとして自信を持って断言できる」という趣旨のことを言った。
もちろん、これはプロ同士の会話であって、一般顧客相手に証券商品を勧誘する際の「断定的判断の提供」はいけないといった金融商品取引法のような野暮を言いたいわけではない。
しかし、銀行や銀行員が会社の将来性を見抜くことが出来るかと言うと、「そうではない」と考えておく方が現実的だ。「成長する会社を見極めて、資金を提供して、育てる」というのは、銀行業の理想であり、近年金融庁なども銀行に求めるところとなっているが、そうした能力が十分ないからこそ、日本の銀行業の現状があるというのが正しい理解だ。
「成長企業を発掘して育てるバンカー」は、あくまでもファンタジーの世界の存在だ。
その4.トップは案件を把握せよ
ドラマの緊迫感から一歩引いて『半沢直樹』を世間並みのビジネス常識で眺めると、「最も問題のある人物」は北大路欣也さんが重厚に演じている中野渡頭取であることに気づく。
シーズン2の第6話目までの段階で東京中央銀行に要求されている帝国航空向けの債権放棄は500億円で、これは同行の債権額の7割に当たるとされている。つまり、銀行は潰れそうな会社に700億円と少々貸し込んでいることになる。
金額と経営上の重要性からから考えて、メガバンクといえども、決して小さな案件ではない。頭取は少なくとも案件の全体像を知っていて、方針を指揮できるのでなければなるまい。重々しくふんぞり返って、建前論を述べている場合ではないはずだ。この男は一体何者なのだ?
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