五輪延期で東京ビッグサイト「利用休止」の波紋 頼みの展示会取りやめで悲鳴をあげる中小企業
東京都も手をこまぬいていたわけでない。東京五輪の開催決定を受けてビッグサイトの貸し出し休止への対応策を議論しており、2019年4月には代替措置としてビッグサイトから1駅分離れた場所に仮設の青海展示棟を開業させた。
本来は五輪終了後の2021年3月に解体される予定だったが、解体を延期し、利用期間を延ばす議論もなされているようだ。キャンセルとなった展示会についても、開催を取りやめた展示会主催者に対して利用料の返還を進めている。
だが、仮設の青海展示棟は大規模な展示会を開催するには規模が小さく、西棟や南棟と分割して展示会を開催することを強いられる。ビッグサイトから徒歩で20分以上かかり、使い勝手も良くない。展示会業界としては展示棟間を移動する必要のない、広々とした東展示棟を使いたいのが本音だ。
コロナ後の展示会はオンラインで
東京五輪後にビッグサイトの貸し出しが再開されても課題は残る。イベント会場という密閉空間に多くの来場客が集まる展示会は「三密」の象徴であり、コロナ前と同様のやり方での展示会は難しい。
岡山市に本社を構えるソフト開発会社システムズナカシマは、36年間欠かさずビッグサイトを含めた展示会に出展し、自社製品の商談に活用してきた。売上高28億円のうち、3分の1は展示会経由で受注を獲得していたという。
ところが、コロナ禍を受けて展示会中心だった営業手法を再考しているという。同社の橋本幸夫専務取締役は、「アフターコロナでは展示会もオンラインで行う流れが加速していくだろう。リアルでの展示会は当面厳しいかもしれない」と話す。コロナ禍が本格化した3月からオンライン展示会用のブースを簡単に作成できるツールを開発。10月からこのツールの販売を開始する。
ANAグループのavatarinと三井不動産も、8月からオンラインでのMICE(会議・展示会場)の実証実験を始めた。単にウェブ上で商談を行うだけでなく、アバターを活用してリアルさながらの偶然の出会いやコミュニケーションも再現する。
新しい生活様式への移行が進む中、リアルの展示会は肩身が狭くなる一方だ。展示会というビジネスモデルそのものが岐路に立っている。
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