安倍首相の後継がトランプ氏だとどうなるのか 次期首相に求めたい日本改革のための方策

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ここでも教員が不足するから、ビジネス界からIT人材を迎え入れる。外国から英語人材を迎え入れる。その際、教員免許などは無視して、思いきって教育現場の改革を図っていくことが必要だ。

こうして教育機関の整備ができ、そこから起業家予備軍が育ってきたら、その人たちの起業を支援する仕組みを作っていく。国の予算で全国7、8カ所にインキュベーションセンターを整備し、ベンチャーキャピタルにも国の予算を1000億円規模でドンと入れていく。

同時に、予算の垂れ流しにならないように、民間からベンチャー経営に詳しい人材を採用し、投資先には厳しい指導を行っていく。

日本をGreatにするための霞が関と企業改革

日本で起業が成功しない要因は、これだけではない。むしろ、霞が関のがんじがらめの規制や新技術、新製品を受け入れようとしない民間企業の風土が大きな障壁となっている。

ベンチャー企業発展の障害となる規制については、新しい省として「規制改革省」を創設する。そこで、日本にある規制を全部検討し、時代遅れなもの、過剰なものは片っ端から廃止していく。

新技術、新製品を受けいれようとしない民間企業の体質については、組織文化の変革を迫る。年功序列の組織の中では、コンセンサスの形成が重視され、保守的になり、1人でも反対者がいると何も前に進まないという問題がある。これを何とか打ち壊す。

そのためには、安倍政権下で始められたコーポレート・ガバナンス強化の動きを加速させる。投資家である年金や運用会社が企業のパフォーマンスを厳しく監視し、リスクを取らず現状に立ち止まっている経営者、既存の取引先ばかり大事にして新技術・新サービスの購入に踏みきらない経営者に、経営の改革を迫っていく。

企業経営を合理的なものに変えていくためには、企業人材のマインドを変えなければならない。だから、年功序列を打ち壊し、成果主義を広げるために、厚労省は転職市場の整備を進める。解雇の困難な労働法の改正を図る。転職が不利になる企業の退職金制度の変更を迫る。

加えて、主婦の労働市場への参入を妨げている配偶者控除は撤廃する。主婦を第3号被保険者として、厚生年金保険料の負担がいらなくなるという制度も撤廃する。

まだまだ、これだけでは十分でないかもしれないが、これだけやれば、少しはMake Japan Great Againの目標に近づいていけるはずだ。安倍首相の後継者には、仮想トランプ首相の採用する政策を取り入れてもらいたい。

植田 統 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

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うえだ おさむ / Osamu Ueda

1957年東京都生まれ。東京大学法学部を卒後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。その後、外資系コンサルティング会社ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)を経て、外資系データベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクール夜間コースに通い司法試験合格。外資系企業再生コンサルティング会社アリックスパートナーズでJAL、ライブドアの再生に携わる。2010年弁護士開業。14年に独立し、青山東京法律事務所を開設。 近著は『2040年 「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)。

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