安倍首相の後継がトランプ氏だとどうなるのか 次期首相に求めたい日本改革のための方策

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大学で開発された世界最高の技術を事業化するのが、シリコンバレーである。そこでは、ビジネス化のための資金供給、人材供給、マネジメントノウハウの提供のエコシステムが出来上がっている。だから、頭脳ばかりでなく、野心も持った起業家を引きつける。

もちろん、大企業だって負けてはいない。経営者は株主に監視され、つねに時代の最先端を走ることを要求される。改革をやめて立ち止まっている企業、好業績を上げられないCEOは淘汰されていく。

こうして常時走り続けることを期待される大企業の中では、徹底した能力主義が実施される。社員は自分の能力を高めることに必死になる。時代に取り残された人々は、一線から消えていく。

つまり、アメリカが世界最高のテクノロジーを持ちGreatであり続けられるのは、移民を受け入れる文化、自由競争の社会、世界最高の大学、起業を容易にするインフラ、企業内での活発な競争の存在など多様な要素が、それを支えているからである。

日本をGreatにするための教育改革

こうしたシステムを熟知しているトランプ大統領が日本の首相になったら、どうするだろうか。

おそらくトランプ首相は、まず日本の人口が1年で40万人も減少している現実に驚愕するに違いない。移民の嫌いなトランプ首相でも、人口の減る社会で成長は困難だから、日本では思いきった移民政策に乗り出すのではないだろうか。

日本は四方を海に囲まれていること、日本語という特殊な言語しか通用しないことから、鋼鉄の壁よりも高い移民障壁が存在している。何もしなければ移民が入ってきてくれないので、トランプ首相は、きっと年間50万人の移民目標を掲げ、思いきった優遇策に乗り出すだろう。

そして、移民が日本に定着しやすくするために、英語の公用語化も図る。楽天では社内公用語を英語とし、日本人同士の会議も英語でやっていると聞くが、日本国でも、日本語に加えて英語を公用語とし、移民が生活しやすい土壌を作っていくだろう。

次に、大学だ。日本の大学は、いまだに昭和初期に作られた学部がそのまま残っている。情報工学は、工学部の中の1つの専攻にすぎない。こんな状況では、世界がしのぎを削っているITやAIの技術者が育たない。現在の日本でも、IT技術者は30万~40万人不足しているといわれ、それが10年後には80万人にもなろうとしている。

こうした状況を打開するために、旧帝7大学に定員1000~2000人規模の情報工学部を新設する。そこには、海外から最先端の頭脳をヘッドハントする。そのためには、高い給与も用意する。むろん、その前提は授業が英語で行われることだ。旧帝大でこうしたイニシアティブが取られれば、多くの私大も追随していくに違いない。

大学だけ変えても日本国民全体のITリテラシーや語学能力は高まらないから、その前の中学高校の教育も抜本的に変える。1人1台のパソコンを提供し、外国人教師を招き、IT教育、語学教育を強化する。

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