カワウソの子、実はみんなカナヅチという衝撃 本能的に泳げるわけではない納得の理由

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例えば、ライオンなどに比べて体の小さいチーターは、トムソンガゼルやインパラなどの、あまり大きくない草食動物を獲物にします。しかし、トムソンガゼルやインパラが、いつでもエサになるとは限りません。環境が変われば、そのどちらもいない環境もあるはずです。

そこでは、小さなネズミを捕らなければならないかもしれませんし、逆に大きな獲物に挑戦しなければならないかもしれません。そのため、エサをとるという「生きる術」は、本能にプログラムしないのです。

不変なことには本能で、変化には知能で対応

また、最初に紹介したカワウソはどうでしょうか。環境によって泳ぎ方は変わります。そこは流れの速いところかもしれませんし、水深が浅い場所かもしれません。獲物になる魚の種類によっても、必要な泳ぎ方も変化することでしょう。そのため、知能によって泳ぎ方を覚えていく必要があるのです。

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哺乳動物は、不変のことには本能で対応しますが、変化することに対しては知能で対応するように進化をしているということです。

そして、子育てもまた、知能を使います。子どもがかわいいとか、子どもを守りたいと思うのは本能です。しかし、子育ての方法は本能にはプログラムされていません。それは、親が子どもに教えるべき「生きる術」は、時代や環境によって変わるからです。さらに、子ども一人ひとりによっても、それぞれに違うからです。

「本能」は、プログラムされた行動は正確に行います。一方の「知能」は、もしかすると判断を誤るかもしれなかったり、うまくいかないかもしれないというリスクをつねに持っています。

それでも哺乳動物は、「教え方は変化する」という戦略を選んだのです。

稲垣 栄洋 静岡大学農学部教授

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いながき ひでひろ / Hidehiro Inagaki

1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院修了。専門は雑草生態学。農学博士。自称、みちくさ研究家。農林水産省、静岡県農林技術研究所などを経て、現在、静岡大学大学院教授。『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『都会の雑草、発見と楽しみ方』 (朝日新書)、『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方』(亜紀書房)など著書50冊以上。

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