カワウソの子、実はみんなカナヅチという衝撃 本能的に泳げるわけではない納得の理由

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さて、繰り返しになりますが、哺乳動物は、「エサをとる」という生き物が生存するうえで最低限に必要な技術さえも、学習しないと得られません。そして、子どもに学習させるというその技術もまた、学習して会得するという仕組みなのです。

もし、親が適切な学習をしなければ、子どもを育てることができません。そして、子どもが適切な学習を受けなければ、子どもは生きていくことができません。よく考えると、これはなんて危うい仕組みなのでしょう。

哺乳動物が欠点のある知能を選んだワケ

哺乳動物は、なぜこのような危うい仕組みで命をつないできたのでしょうか。これは、哺乳動物が発達させてきた「知能」という戦略ゆえのことです。

「知能」に対して「本能」には、生きるための技術があらかじめプログラムされています。例えば、虫などは、本能をみがき、発達させてきました。このプログラムに従えば、誰の助けを受けなくても、産まれたばかりの子どもでも、生きていくことができます。本能というのは、ある意味で、とてもすぐれたシステムなのです。

ところが、本能には欠点がありました。

それは、「環境の変化に対応できない」ということです。どんなに生きていく環境や状況が変化しても、生物はあくまでも本能というプログラムに従って行動します。環境の変化に合わせて本能のプログラムが書き換えられるためには、とても長い進化の歴史を必要とするのです。もしその書き換えが環境の変化のスピードに追いつかなければ、その生物は、時代遅れのプログラムのために滅んでしまうかもしれません。

一方、知能というのは、自分で状況を判断する力です。環境が変化しても、状況に応じて行動を変えることができるのです。しかし、その知能にも、欠点があります。知能は、学習してたくさんの情報をインプットしなければ、何もすることができないのです。

本能にも知能にも、メリットとデメリットがあります。この2つの戦略のうち、哺乳動物は知能を選んで、進化を遂げたということです。

もっとも、哺乳動物にも本能はあります。ほとんどの場合、産まれたばかりの赤ちゃんは教わらなくても母親のおっぱいを飲むことができるようになります。恋の季節になれば、オスはメスを好きになり、メスはオスのことが好きになります。たとえ環境が変わっても変化することのない不変の行動だけは、本能でプログラムされているのです。

それでは、どうして「生きる術」は、知能に依存しているのでしょうか。もうおわかりでしょう。生きる術は、環境に合わせて変わるものだからです。

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