東武6050型、ローカル列車でも色あせない風格 かつて浅草直通の快速で活躍、今は地元の足

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現場の人々は、6050型を「ロクセンゴーマル」と呼ぶ。6000型から更新の過程では、新旧の車両を併結して走らせることもあった。6050型の整備を担う南栗橋車両管区新栃木出張所の班長、宇塚淳男さんは「旧車(6000型)併結作業は重たい特別な器具が必要だったうえ、営業線で決まった時間内に終わらせないといけないため気を遣った」と6050型の登場当時を振り返る。

新栃木検修区(当時)のエリアでは冷房が付いている車両が珍しかったという。冷房のおかげで季節の変わり目に天井の扇風機を着脱する必要もなくなった。

「故障が少なく整備がしやすかったが、冬は雪を巻き込むことがあった。あとはシカとかクマとか……」。近年は降雪自体が少なくなっているようだが、動物との衝突はいまでも月に1、2回あるそうだ。そのたびに点検したり、排障器などを修理したりしているという。

現在はローカルの足

都心と日光・鬼怒川エリアを結ぶ足として重宝された6050型も時代の流れとともに役割を変えた。2012年には4両が大きな展望窓の観光用車両「スカイツリートレイン」(634型)に生まれ変わった。臨時特急などで活躍し、現在はイベント用に使われている。

6050型を改造した「スカイツリートレイン」(記者撮影)

2019年には、日光線全線開通90周年を記念し、車両設備は6050型のまま、6000型のようなデザインを施した「リバイバル車両」が登場。外観に旧6000型の「ロイヤルベージュ」と「ロイヤルマルーン」を塗り分け、車内に「金茶色」の座席モケットを復活させた。

浅草と日光・鬼怒川エリア、会津方面を併結・分割しながら結ぶ役目は、2017年4月にデビューした特急用車両の「リバティ」(500系)に譲った。現在はもっぱら南栗橋以北のローカルの足として地元の利用者から親しまれている。

6000型としての登場から約50年、6050型への更新から30余年。都心から会津まで走破する運行はなくなったものの、大手私鉄には珍しい2ドアセミクロスシートの車内は、どことなく懐かしい長距離列車の風格をたたえている。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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