メルカリ「アメリカ攻略」でやっと掴んだ手応え 積極投資は不変「赤字も株価も気にしない」

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メルカリの山田進太郎社長は、今後の投資について「効果を見ながら再加速したい」と語った。写真はは2019年12月(撮影:今井康一)
多くの人の日常に浸透し始めたフリマアプリのメルカリ。新型コロナによる外出自粛で出品・購入が促進され、事業成長が加速している。8月6日に発表された通期決算(2020年6月期)によれば、コロナ禍においては過去に取引経験のあるユーザーが再びメルカリを利用する傾向も現れているという。国内の年間取扱高は6259億円(前期比28%増)に達した。
グロース(事業規模の拡大)最優先で投資を継続する「勝負の年」。2019年8月、山田進太郎社長は決算説明会で次年度の経営方針についてそう掲げた。結果としては宣言通り、スマホ決済のメルペイやアメリカのフリマ事業に積極的に費用を使い、通期の売上高が762億円(前期比48%増)に拡大した一方、営業赤字は193億円に膨らんだ(前期は121億円の赤字)。
ただ直近の2020年4~6月の決算だけを見ると、営業損益は9億円の黒字となっている(同1~3月は63億円の赤字)。新型コロナを受け、リアルイベントや宣伝に関わる費用を一時的に抑制した影響が大きいものの、日本のフリマ事業の収益性が着々と高まっていることも寄与した形だ。
今期のメルカリの経営方針について山田氏は、日米のフリマ事業、スマホ決済事業の基盤強化を進めることとともに「循環型社会の実現のために必要不可欠な存在になる」という社会的課題を意識したミッションも強調している。コロナ禍でどんな心境の変化があったのか。山田社長を直撃した。

種まきしたことが実った

――「勝負の年」と位置付けた前期(2020年6月期)の成果について、どう評価しますか。

事業ごとに状況は異なるが、全体的に、種まきしてきたことが実った年だった。日本のフリマ事業からいくと、前期は出品・購入の分量をリバランスする、つまりわれわれにとっての商品在庫である出品を促進することに重点を置いた。機能改善やポイント施策が効き、年明けくらいから成長回復の兆しが見えていたが、そこに新型コロナが来た。家にいる時間が増え、メルカリで出品・購入してみようという人が増え、成長は加速した。

アメリカも似たような状況だ。昨年末くらいからオンライン・オフライン両軸でプロモーションを強化しており、徐々に売買を活性化することができていた。コロナ影響という意味では、現地でロックダウンがあったのに加え、アマゾンはじめEC大手で生活必需品以外の商品の配送遅れが目立ったため、エンタメ系の商品売買などでメルカリに目が向いた。結果として、上場前から目指していた月間流通総額1億ドル(約100億円)を達成できた。

2020年2月、メルカリとNTTドコモはキャッシュレス決済などで業務提携した。写真はメルカリの山田社長(左)とNTTドコモの吉澤和弘社長(撮影:鈴木紳平)

メルペイは予定通り、第1フェーズ(ユーザーと加盟店の拡大)、第2フェーズ(フリマ事業との相乗効果の追求)を段階的に進めてきた1年だった。ヤフーとLINEの経営統合発表など、競争環境の変化もあった。そんな中でメルペイも、NTTドコモと加盟店開拓の共通化に向けて提携を結んだり、オリガミを買収して(同社が従前から提携していた)信金中央金庫と地方のキャッシュレス化推進に乗り出したり、着々と手を打っている。

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