自転車がいま改めて注目されている。新型コロナウイルスからの感染を避けようと、通勤や通学時に電車などの公共交通機関には乗らず、自転車を利用する人が続々と増えているためだ。
それを受けて、目下、自転車関連企業の業績や株価も、にわかに沸き立っているのが実態。いわば、コロナ禍で明暗分かれたうちの、株式市場”勝ち組”だ。
その代表格は、大阪を本拠に自転車専門店「サイクルベースあさひ」を全国展開する、あさひである。緊急事態宣言が明けた2020年6月、7月の既存店売上高は、2カ月連続で前年同月比140%という驚異的な伸びを記録した。業績の上方修正期待を受けて、株価は8月、分割調整後の上場来高値を更新したほどだ。
あさひだけではない。自転車用変速機や制御機器などを製造するシマノも、自転車活況の恩恵にあずかっている日本企業だ。台湾巨大機械工業(ジャイアント・マニュファクチャリング)をはじめ、台湾メーカーが席巻するスポーツ車など高級自転車市場において、シマノの変速機は一強状態。世界シェア約6割を有し”自転車業界のインテル”の異名を誇る。
「自転車業界のインテル」はスズキと同じ価値
シマノの2020年1~6月期(第2四半期)決算は、外出自粛要請のダメージが大きく、前年同期比で減収減益となったが、それでも営業利益率は18%という高収益を保持している。あさひと並び、シマノの株価も、今年8月には1972年の上場以来最高値を更新。現在の時価総額は2.1兆円超で、これは自動車大手のスズキに並ぶ水準なのだ。
『会社四季報 業界地図 2021年版』(東洋経済新報社、8月28日発売)では、自動車、IT、サービス・小売りなど、激動する全173業界の現状と今後について、会社四季報記者が徹底解説した。自転車業界に加えて、テレワーク、オンライン教育、病院グループ、中食・宅配、ベンチャー・VC(ベンチャーキャピタル)など、新型コロナで注目が集まる業界も、新たに取りあげている。
自転車の場合、国策の追い風も強まっている。6月には、国土交通省・自転車活用推進本部が自転車通勤・業務利用を拡大するために、新たな取り組みを発表した。それによれば、自転車通勤を推奨している「優良企業」の認定や、道路の自転車専用通行帯の拡充、シェアサイクルの普及などをいっそう図っていくのだという。
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