「7月31日のコンサートは、中高生の合唱団との共演コンサートで、2018年から開催しています。今年も5月16日に開催の予定でしたが、4月の下旬時点で、『これは無理だ』と開催日を7月末にずらした。しかしさらに5月を過ぎた時点で『普通には開催できない』と覚りました。このコンサートを実現するためにどうしたらよいのか、と合唱団メンバー含めみんなで知恵を絞った、その答えがマスクでした」(村上氏)
しかし、普通のマスクではとても使用には耐えない。歌えば息苦しく、また口を開け閉めしているうちに顎から外れ、鼻のほうまでずり上がってきてしまう。団員一同で、「合唱に適したマスク」試作品を作ってみようということになった。
ヒントはベリーダンスの衣装
試行錯誤のうえたどり着いたのが、ベリーダンスの衣裳をヒントにした、鼻から胸元までを布ですっぽりと覆う形だ。耳にかける紐をそのまま顎下で結び合わせて固定できるようになっている。口の開け閉めの動きを邪魔せず、呼吸も胸元のほうに抜けていくので、息苦しくない。通気性がある蒸れにくい素材を選んだ。もちろん洗って何度でも使用が可能だ。
マスクとして飛沫拡散防止の役割を果たすかや、合唱の演奏に支障がないかなども、感染症専門医や、音響の専門家に分析してもらったという。
「それから感染症の先生には、団員に対して感染症の一般的な対応を講義をしてもらったことがありがたかったです。これにより、ウイルスという“見えない危険”がある中、どう立ち向かいながら活動を続けていくか、という知識に基づいた前向きな心構えを持てるようになったと感じます」(村上氏)
こうして「歌えるマスク」は完成した。
そしていよいよ、7月31日のコンサートに臨んだ東京混声合唱団。例年であれば、「コン・コン・コンサート」と銘打ったこの公演では、NHK全国学校音楽コンクール、全日本合唱コンクールの課題曲を演奏することになっている。
しかし本年は、NHK全国学校音楽コンクールも、全日本合唱コンクールも中止となり、学生たち自身が新しい課題曲での挑戦ができていない状態だ。
そのため、第1部の最後に昨年の課題曲2曲を学生たちとともに共演。ただし実際に舞台に大勢の学生を呼ぶことはできないため、大型モニターを舞台に設置し、学生たちが歌う様子の動画を映しながら、それに合わせて舞台上の合唱団が歌うという形式をとった。
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