プロ合唱団が開発「歌えるマスク」の実力とは 「ベリーダンス」の衣裳をヒントに完成した

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そこで、自身も趣味でサックスを演奏するという堀越氏は、自粛期間中を利用して、管楽器用マスクを試作。切り込みの大きさや位置には苦労したものの、もともと立体型のマスクが存在したことと、仕組みとしては単純なため、開発には「歌えるマスク」ほどの苦労はなかったようだ。メーカーであるテクナードのほうでも、新たに型を起こし、量産に対応してもらえたため、ユーザーにとって無理のない価格に問題なく設定できた。

マスクの裏側には、口元を覆う布がつけられている。管楽器を吹かないときは通常のマスクとして用いる。リハーサル中、ちょっとした打ち合わせをするときなどに便利(筆者撮影)

「前例がなかったので、値付けに悩みました。これまでないものだからといって、値段を上げていいというものではない。結局、管楽器用でない普通のマスクにプラス100円、200円という程度、50個入り、100個入りの使い捨てマスクと同程度が適当なのではないかと、この値段にしました」(堀越氏)

こちらの売れ行きは同社も驚くほどで、発売に向けて予約注文が殺到。同社に話を聞いたのが8月18日発売当日だったが、その時点で、予想をはるかに超えていたという。

残念ながら、横笛系のフルート、ピッコロには対応していない。しかし、目下、開発の可能性について鋭意検討しているとのことだ。

自由に音楽を楽しめる社会を目指して

「講師などプロの演奏家や、多くの愛好家が活動を制限されていることは本当に残念。マスクだけではもちろん感染を防ぐことはできませんが、こうしたアイテムも活用して気を遣いながら演奏すれば安全性は確実に向上します。音楽を楽しむことを諦めないでほしいです」(堀越氏)

日本では音楽は不要不急のものという見方が強く、プロの音楽家なら「生活がかかっている」ことが免罪符ともなるが、アマチュアにとっては趣味、つまり遊びである。

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遊びにすぎないのだから、自分や他者を守るために、我慢するのが当然だ。そうした見方から、活動を自粛している音楽ファンは多い。

しかし音楽は心の動きから自然に出ずるものだ。とくに息を音楽にのせて自らの思いを発する合唱や、管楽器の奏者にとって、活動を禁じられることは文字どおり息を止められるようにつらいことではないだろうか。

コロナの脅威は、たとえ検査やワクチンが普及したとしても、完全になくなることはないだろう。ウイルスと共存する社会で、本当の意味で自由に息ができるよう、音楽業界の各団体や企業が一歩一歩前進を始めた。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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