自衛隊装甲車「エアコン装備が後れすぎ」の面妖 旧日本軍と同様「根性」依存のままでいいのか

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一方で、既存の16式にはエアコンが装備されるかどうかは現時点では決定されていない。普通の軍隊ならば新規調達にあわせて既存車両にもエアコンを取り付けるだろう。それとも夏場には既存の16式は使わないのだろうか。

2019年に新たに導入された19式155ミリ自走榴弾砲は乗員がキャブに3名、中央部の幌がついている席に2名となっている。これがキャブにはエアコンがついているが、中央部の席にエアコンがないという不公平な構造になっている。中央部の席はいちばん体力が必要な装填手用にもかかわらずだ。諸外国は5名乗りのキャブを採用しており、合理的設計とは言いがたい。

調達数が少なく目的化しているためか?

陸自は既存の装甲車両について、エアコンを含めて近代化をほとんど進めていない。これは毎年の調達数が少なく、調達に30年ぐらいかけるので調達単価が他国の数倍になるのが関係しているのだろうか。既存車両の近代化をする、予算がない。またどのように実戦で使うかという意識が低く、調達自体が目的化しているためだろうと、筆者は考えている。

陸自は海外邦人救出の名目で、オーストラリア製の大型4x4耐地雷装甲車、ブッシュマスターを2013(平成25)年から導入した。同車はエアコン装備で、ルーフの内張りには断熱材を張ってエアコンの効率を高めている。さらに車内には冷水の飲料水のタンクを装備するなど、熱中症対策を重視している。

このような車両こそが「わが国固有の環境」にこそ必要ではないだろうか。海外製の装備のほうが「わが国固有の環境」に適合しているのはなんとも皮肉である。要は陸自の装甲車両に対する思想が昭和の時代で止まっているということにほかならない。

陸自の夏場対策は旧日本軍同様に「根性」に依存している。これを見直さないのであれば、隊員の確保にも支障を来すだろう。少子高齢化が進み、隊員の平均年齢も上昇している。装甲車両のエアコン装備は焦眉の急のはずだ。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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