「性善説ビジネス」は、通用しない 中国の「揺さぶり」に、屈しない法(下)

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三国志演義の中に、諸葛亮孔明という天才的軍師が登場することは、みなさんもご存じのはずだ。この英雄も、突き詰めれば策略と計略と知略と機略で劉備玄徳率いる蜀の名を天下に轟かせる。敵をだましたり、欺いて勝利を収める点に、拍手喝采を送る中国人は少なくない。

性善説アプローチでは勝てない

勝つためには手段を選ばない発想が定着しているので、日本的な「気高さとか、誇り」といった感覚は、いわば二の次三の次なのである。中国だけではない。日本人の一部には「皆の者、正々堂々と勝負、勝負」などと考える発想があるが、世界では非常識な部類に入るといっても過言ではないだろう。

もっとも、昔の日本にしても、戦国時代の武将の「だましのテクニック」や「交渉術」は当時は世界標準を大きく上回っていたのではないか。戦国時代は、「下剋上」が当たり前だったから、お互いそう簡単にだまされたり、油断をして裏切られることはあり得なかった。

それに比べ、今の外交関係や対中貿易では、日本人はどうしても「性善説」にこだわっているから、やることなすこと相手の思惑にだまされっぱなしである。まさに、これは残念ながら「平和ボケ」としか言いようがない。

私の知る限り「振り込め詐欺」など、中国では聞いたことがない。世界でこのような幼稚な手口が通用するのは日本人が「性善説」であるからだ。世界の歴史は、残念ながら「性悪説」を中心に動いていると考えるのは、常識中の常識であろう。

中国の損害賠償の時効は、せいぜい1カ月

今回の商船三井の船舶の差し押さえ事件も、中国側の出方を、「最初から最後まで読めなかったことで起きた悲劇」といえなくもない。もちろん、法律的にはグレーゾーンという議論はあるのだろうし、そうした意見を無視するわけではない。

ただ、そもそも、日中戦争勃発前の1936年の船の賃料をめぐる損害賠償訴訟などに耳を傾けるべきではなかった。普通の売買取引のクレームなら、中国では1カ月過ぎたら、事実上時効である。それなのに、78年前の損害賠償がなぜ今になって問題になるのか。世界の常識でも理解できないだろう。

 相手は「性悪説」アプローチから来ている。商船三井は誠意をもって話せばわかると誤解をして2007年以来、示談を約7年も続けていたのだ。こうした感覚でやっていると、商船三井の「次」なる事件も避けられないだろう。

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