一方、『魔術師の呪い』はどうか。『大鴉』ではいつの時代とも場所がどこという指定もなかったが、こちらは魔術が跋扈する中世末期のイギリスと特定されている。主人公も若い学者ではなく、能力は素晴らしいが非常にお人よしでグズな中年魔術師エラスムス・クレーブンという設定。さらに彼がその死を悲しんでいるレノアは、若い娘どころか彼の後妻であった女性である。
そしてクレーブンには先妻との間に、『大鴉』におけるレノアくらいの年齢の娘、エステルまでいる。通常のリライトでは主人公の青年を無理矢理に少年に変更してでも、子ども達の共感をつかもうと画策するものだが、本作ではまるで逆。青年を子どもどころか中年の冴えないおっさんに変えてしまっているところからして、子供の共感を拒否するようなところがあり、子ども向け読みものとしては非常に異色である。
いろいろなことを話すカラス
肝心の筋だが、冒頭の、悩める主人公の書斎に大鴉が飛び込んできて人語を話す、というところだけは同じなのだが、それ以降は完全に別のストーリーになっている。
まず大鴉は「Nevermore」どころか色々な言葉をしゃべりだす。なんとこの大鴉は、悪の大魔術師スカラブスによって大鴉の姿に変えられた、クレーブンの友人ベドローだったのだ。クレーブンの魔術でどうにか元の人間の姿に戻ることができたベドローは、大魔術師スカラブスの城でスカラブスに魔法の戦いを挑んだところ大鴉にされてしまったと悔しそうに語るが、ふと部屋に飾ってあるレノアの肖像画を見ると、瓜二つの女性をスカラブスの居城で見かけたと騒ぎ出す。
父の仇敵であった悪魔術師スカラブスとはあまり関わりあいたくないと思っていたクレーブンは、当初ベドローを追い返そうとしていたが、その話を聞き、ことによるとスカラブスがレノアの魂を奴隷としているのかもしれないと思い始める。結局クレーブンは、突然現れたベドローの息子とベドロー、娘エステルと4人で、スカラブスの魔術による様々な妨害をはねのけながらスカラブスの居城に向かう。
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