今年4~5月の2カ月で、コロナ患者の受け入れ有無にかかわらず、200~399床以上の病院は平均約1億~1.3億円以上も入院収益が減っている(前年同期比)。400床台は平均1.7億円、500床以上の病院は平均3億円以上もの入院収益減である(同)。さらに、公的病院、公立病院や大学病院に限って言えば、4~5月の入院患者の減少幅はコロナ受入病院のほうがコロナを受け入れなかった病院の倍近くになっている(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの分析による)。
つまり、公的・公立病院や大学病院についてみると、4~5月に億単位の収益減に見舞われ、 かつ、コロナ患者を受け入れた病院は受け入れなかった病院に比べて入院患者数減少幅が倍近く大きかったと見込まれる。こうした実態から、コロナ受け入れを渋る病院(特に公的・公立病院や大学病院)が増えているものと思われる。1つのICUにつき1日30万円、1つの重症者病床につき1日5万円の補助金では、減収分をまったく取り返せず、割に合わないと病院経営層は感じていると思われる。
そのうえ、これらの補助金の支払いが遅延しているといわれている。補助金の支払いが遅れたことが、病院職員への月々の給与や夏のボーナスの支払いに間に合わず、コロナ受け入れ病院での給与カットや賞与カットが広がった一因になったのではないかと推察される。これも病院がコロナ対応への参加に消極的になる原因であろう。
もっと大きな金額の補助金をもっと簡単な手続きで
要するに、コロナの重症者用病床を提供する病院に対して、もっと大きな金額の補助金をもっと簡単な手続きでスピーディーに支給する財政支援制度を創設し、病院の「行動変容」を引き起こさなければならない。つまり、主だった病院が、自発的にコロナ用病床を提供したくなるように、常識を超えた財政支援策を作るべきだ。常識を超えた財政支援には常識を超えた金額の財政支出が必要になるが、以下に述べるように、それでも緊急事態宣言を再発出して経済を止めるよりは、かなり小さな損失で済むのである。
以下は仮の案であり、詳細は詰める必要があるが、金額のレベル感は次のようになる。なお、これはコロナ対策に貢献する病院への財政的支援であって、コロナ患者を受け入れない病院に対する支援策ではない、という点は強調しておきたい。財政支援を準備することで、コロナの重症患者受け入れに消極的な病院の姿勢を変えることが目的である。また、以下は重症者病床の拡充のための政策だが、コロナの軽症・中等症者用病床を拡充することも必要であり、そのために同様の財政支援を行うことも考えられる。日本の急性期病床数は人口1000人当たり7.8床とOECD平均の2倍以上もあり、病床が物理的に足りないわけではない。インセンティブをうまく設計することで、病院の行動変容を促すことが以下の政策の意義である。