東京五輪施設、現地を覆う「1年延期」の視界不良 本来なら2020年8月9日が閉会式だった…

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東京都は五輪後の利用に向け、コンセッション方式(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づく公共施設等運営事業)を導入。所有は都のままだが、電通やNTTドコモ、大手芸能事務所のアミューズなどが設立した東京有明アリーナ社が運営権(2028年までで約94億円)を借り、利用促進を図る形を取っている。

同社が設定する年間来場者目標は140万人で、うち89万人がコンサートの集客。それが年間3億6000万円の黒字の根拠になっていた。

とはいえ、コロナ禍の中では3密になる大規模イベントは当面、開催できない。新型コロナの収束次第ではあるが、数年間は収支計画どおりの運用は不可能だろう。そうなると、周辺の商業・宿泊施設にも影響が出る。本当に頭が痛い状況なのだ。

五輪施設が集積する湾岸エリアは「1年延期」の困惑に覆われていた(写真:筆者撮影)

こうした実情を踏まえ、東京都も1年延期による維持管理費の負担増、コロナ禍による施設後利用計画の見直しという新たな問題に取り組まなければいけなくなった。

「組織委員会が東京2020大会開催のために施設内外に設置した仮設物は、劣化防止や安全面を考えていったん撤去するものもあるが、延期に関わるコスト縮減の観点から、安全対策などを施したうえで残すものも出てくる。競技団体や都民がどの程度、利用可能かを検討しながら決めていく」(東京都オリ・パラ準備室)

このように、少しでもコストを減らしながら、整備してきた施設の有効活用を進めようと努力している。ただ、大会自体の開催可否が流動的になっている今、はっきりした方向性は示せないというのが本音ではないか。

私たちが向き合うべき課題

今回、人のいない五輪会場を回ってみて、「新設の競技場がすでに存在している現実」を再認識させられた。

今さら「整備費が高すぎる」「なぜこんな不要な施設をあちこちに作ったのか」と文句をつけても、不毛な議論になるだけ。今後、五輪があろうとなかろうと、目の前にある施設を何とかしなければいけない。それがわれわれに突きつけられた現実だ。

「オリ・パラを契機に整備された新規恒久施設は、大会後も広く都民に利用され、レガシーとして親しまれる施設としていくことが重要。都民利用やアマチュアスポーツへの配慮、障害者スポーツ振興の場など、民間施設とは異なる役割が期待されている」と、東京都オリ・パラ準備室も強調する。

コロナ禍の真っ只中にあって、五輪やスポーツ施設のことに関心を持てない人も多いだろう。しかし、その担い手が自分たちであることを今一度、自覚したうえで、再スタートを注視したいところだ。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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